Pantothenic acid/ja: Difference between revisions
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'''パントテン酸'''('''vitamin B<sub>5</sub>''')は[[B vitamin/ja|ビタミンB群]]の一種で、[[essential nutrient/ja|必須栄養素]]である。すべての動物は、脂肪酸の代謝に不可欠な[[coenzyme A/ja|補酵素A]](CoA)を合成し、[[protein/ja|タンパク質]]、[[carbohydrate/ja|炭水化物]]、[[fat/ja|脂肪]]を合成・代謝するためにパントテン酸を必要とする。 | |||
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パントテン酸は[[pantoic acid/ja|パント酸]]と[[beta-Alanine/ja|β-アラニン]]の組み合わせである。その名前は[[:ja:ギリシャ語|ギリシア語]]に由来する。{{lang|grc|πάντοθεν}}に由来する。パントテン酸は、少なくとも少量であれば、ほとんどすべての食品に含まれているためである。パントテン酸の欠乏は、ヒトでは非常にまれである。パントテン酸ナトリウムや遊離パントテン酸よりも化学的に安定しているため、製品の保存期間が長くなる。 | |||
==定義== | |||
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[[File:Coenzym A beschriftet.svg|thumb|left|300 px| | [[File:Coenzym A beschriftet.svg|thumb|left|300 px|コエンザイムAの構造:1:3′-ホスホアデノシン 2:二リン酸、有機リン酸無水物 3:パント酸 4:β-アラニン 5:システアミン]] | ||
パントテン酸は水溶性の[[vitamin/ja|ビタミン]]で、[[B vitamin/ja|ビタミンB群]]の一つである。アミノ酸のβ-アラニンとパント酸から合成される([[#Biosynthesis|生合成]]および補酵素Aの構造図を参照)。[[vitamin E/ja|ビタミンE]]や[[vitamin K/ja|ビタミンK]]が[[vitamer/ja|ビタマー]]として知られるいくつかの化学的に関連した形で存在するのとは異なり、パントテン酸は1つの化合物である。多くの酵素プロセスの補酵素である[[coenzyme A/ja|補酵素A]](CoA)の合成における出発化合物である。 | |||
==コエンザイムAの生合成に使用== | |||
{{Anchor|Use in biosynthesis of coenzyme A}} | |||
[[File:CoA_Biosynthetic_Pathway.png|thumb|left| | [[File:CoA_Biosynthetic_Pathway.png|thumb|left|パントテン酸からのCoA合成経路の詳細]] | ||
パントテン酸は、5段階の過程を経てCoAの前駆体となる。 生合成にはパントテン酸、システイン、4当量のATPが必要である(図参照)。 | |||
# | # パントテン酸は酵素[[pantothenate kinase/ja|パントテン酸キナーゼ]]によって4′-ホスホパントテン酸に[[Phosphorylation/ja|リン酸化]]される。これはCoAの生合成におけるコミットメントステップであり、ATPを必要とする。 | ||
# | # [[phosphopantothenoylcysteine synthetase/ja|ホスホパントテノイルシステイン合成]]酵素によって4′-ホスホパントテネートに[[cysteine/ja|システイン]]が付加され、4'-ホスホ-N-パントテノイルシステイン(PPC)が形成される。このステップは[[ATP hydrolysis/ja|ATP加水分解]]と結合している。 | ||
# | # PPCは[[phosphopantothenoylcysteine decarboxylase/ja|ホスホパントテノイルシステイン脱炭酸酵素]]によって[[4'-phosphopantetheine/ja|4′-ホスホパンテテイン]]に[[Decarboxylation/ja|脱炭酸]]される。 | ||
# 4′- | # 4′-ホスホパンテテインは酵素[[Pantetheine-phosphate adenylyltransferase/ja|ホスホパンテインアデニルトランスフェラーゼ]]によってアデニル化(正しくは[[Adenylation/ja|AMP化]])され、脱ホスホ-CoAを形成する。 | ||
# | # 最後に、脱ホスホ-CoAは酵素[[dephospho-CoA kinase/ja|脱ホスホコエンザイムAキナーゼ]]によってコエンザイムAにリン酸化される。この最終段階にもATPが必要である。 | ||
この経路は[[end-product inhibition/ja|最終産物阻害]]によって抑制されるが、これはCoAが第一段階を担う酵素であるパントテン酸キナーゼの競合的阻害剤であることを意味する。 | |||
コエンザイムAは[[citric acid cycle/ja|クエン酸サイクル]]の反応機構に必要である。この過程は体内の主要な[[Catabolism/ja|異化経路]]であり、燃料として[[carbohydrate/ja|炭水化物]]、[[amino acid/ja|アミノ酸]]、[[lipid/ja|脂質]]などの細胞の構成要素を分解するのに不可欠である。CoAはエネルギー代謝において、[[pyruvate/ja|ピルビン酸]]がアセチル-CoAとして[[tricarboxylic acid cycle/ja|トリカルボン酸サイクル]](TCAサイクル)に入るため、また[[α-ketoglutarate/ja|α-ケトグルタル酸]]がサイクルで[[succinyl-CoA/ja|スクシニル-CoA]]に変換されるために重要である。CoAはアシル化やアセチル化にも必要であり、それらは例えば[[signal transduction/ja|シグナル伝達]]や様々な酵素機能に関与している。CoAとしての機能に加えて、この化合物は[[acetyl-CoA/ja|アセチル-CoA]]および他の関連化合物を形成するための[[acyl/ja|アシル]]基キャリアとして働くことができる;これは細胞内で[[carbon/ja|炭素]]原子を輸送する方法である。CoAはまた、脂肪酸合成に必要な[[acyl carrier protein/ja|アシルキャリアタンパク質]](ACP)の形成にも必要である。その合成は、チアミンや葉酸などの他のビタミンとも結びついている。 | |||
==食事の推奨量== | |||
{{Anchor|Dietary recommendations}} | |||
米国医学研究所(IOM)は、1998年にビタミンB群の推定平均所要量(EAR)と推奨食事許容量(RDA)を更新した。その時点では、パントテン酸のEARとRDAを設定するのに十分な情報がなかった。このような場合、理事会は、後日、AIがより正確な情報に取って代わられる可能性があることを理解した上で、適正摂取量(AAI)を設定している。 | |||
14歳以上の10代と成人に対する現在のAIは、5 mg/日である。これは、典型的な食事の場合、尿中排泄量は約2.6 mg/日であり、食物結合パントテン酸の[[bioavailability/ja|生物学的利用能]]はおよそ50%であるという観察に基づいている。妊娠中のAIは6 mg/日である。[[lactation/ja|授乳期]]のAIは7 mg/日である。12ヵ月までの乳児のAIは1.8 mg/日である。1~13歳の子どもについては、AIは2~4 mg/日と年齢とともに増加する。 EAR、RDA、AI、ULを総称して[[Dietary Reference Intake/ja|食事摂取基準]](DRI)と呼ぶ。 | |||
{| class="wikitable" | {| class="wikitable" | ||
|- | |- | ||
! | ! 年齢層 | ||
! | ! 年齢 | ||
! | ! 十分な摂取量 | ||
|- | |- | ||
| | | 乳幼児 | ||
| 0–6 | | 0–6 ヶ月 | ||
| 1.7 mg | | 1.7 mg | ||
|- | |- | ||
| | | 乳幼児 | ||
| 7–12 | | 7–12 ヶ月 | ||
| 1.8 mg | | 1.8 mg | ||
|- | |- | ||
| | | 子供 | ||
| 1–3 | | 1–3 歳 | ||
| 2 mg | | 2 mg | ||
|- | |- | ||
| | | 子供 | ||
| 4–8 | | 4–8 歳 | ||
| 3 mg | | 3 mg | ||
|- | |- | ||
| | | 子供 | ||
| 9–13 | | 9–13 歳 | ||
| 4 mg | | 4 mg | ||
|- | |- | ||
| | | 成人男女 | ||
| 14+ | | 14+ 歳 | ||
| 5 mg | | 5 mg | ||
|- | |- | ||
| | | 妊婦 | ||
| (vs. 5) | | (vs. 5) | ||
| 6 mg | | 6 mg | ||
|- | |- | ||
| | | 授乳中の女性 | ||
| (vs. 5) | | (vs. 5) | ||
| 7 mg | | 7 mg | ||
|} | |} | ||
多くの栄養素について、米国農務省は食品成分データと食品消費調査の結果を組み合わせて平均消費量を推定しているが、調査や報告書にはパントテン酸は分析に含まれていない。成人の1日摂取量に関するあまり正式でない推定値では、約4~7 mg/日と報告されている。 | |||
[[:en:European Food Safety Authority|欧州食品安全機関]](EFSA)は、これらの情報をまとめて食事摂取基準値(Dietary Reference Values)と呼んでおり、RDAの代わりに人口摂取基準(Population Reference Intake:PRI)、EARの代わりに平均必要量(Average Requirement)を用いている。AIとULの定義は米国と同じである。11歳以上の女性と男性については、十分摂取量(AI)は5 mg/日とされている。妊娠中のAIは5 mg/日、授乳期は7 mg/日である。1~10歳の子供のAIは4 mg/日である。これらのAIは米国のAIと同様である。 | |||
===安全性=== | |||
== | 安全性に関しては、IOMは十分なエビデンスがある場合、ビタミンとミネラルの[[Tolerable upper intake level/ja|耐容上限摂取量]]レベル(UL)を設定している。パントテン酸の場合、高用量摂取による副作用に関するヒトでのデータがないため、ULは設定されていない。EFSAも安全性の問題を検討し、パントテン酸のULを設定するには十分な証拠がないという、米国と同じ結論に達した。 | ||
===表示要件=== | |||
米国の食品および栄養補助食品の表示目的では、1食あたりの摂取量は1日当たりの摂取価値(Daily Value)のパーセンテージ(%DV)で表される。パントテン酸の表示目的では、デイリーバリューの100%は10 mgであったが、2016年5月27日付でAIと一致させるために5 mgに改訂された。 | |||
更新された表示規制への準拠は、年間食品売上高が[[US$]]10 百万以上の製造業者については2020年1月1日までに、それ以下の製造業者については2021年1月1日までに義務付けられた。新旧の成人一日摂取量の表は[[Reference Daily Intake/ja|基準一日摂取量]]に掲載されている。 | |||
==摂取源== | |||
{{Anchor|Sources}} | |||
===食事=== | |||
=== | パントテン酸を含む食品としては、乳製品や卵などの動物性食品がある。植物性食品では、ジャガイモ、トマト製品、オート麦、ひまわりの種、アボカドなどがよい。キノコ類もよい摂取源となる。全粒穀物もビタミンの供給源だが、白米や白玉粉を作るために製粉すると、全粒穀物の外層に含まれるパントテン酸の多くが除去されてしまう。動物用飼料では、アルファルファ、穀類、フィッシュミール、ピーナッツミール、糖蜜、米ぬか、小麦ふすま、酵母が最も重要な供給源である。 | ||
===サプリメント=== | |||
=== | パントテン酸の[[Dietary supplements/ja|栄養補助食品]]は、一般的に[[pantothenol/ja|パントフェノール]](または''パンテノール'')を使用する。[[Shelf-stable food/ja|常温可能な可能な]][[Functional analog (chemistry)/ja|アナログ]]を使用するのが一般的であり、消費されるとパントテン酸に変換される。パントテン酸カルシウムは、酸、[[alkali/ja|アルカリ]]、熱などの安定性を悪化させる要因に対してパントテン酸よりも耐性があるため、製造に使用されることがある。栄養補助食品に含まれるパントテン酸の量は、最大1,000 mg(成人の必要摂取量の200倍)まで含まれることがあるが、そのような多量摂取が有益であるという証拠はない。[[:en:WebMD|WebMD]]によると、パントテン酸サプリメントには主張されている用途の長いリストがあるが、そのいずれをも支持する科学的証拠は不十分である。 | ||
[[Dietary supplements]] | |||
栄養補助食品としてのパントテン酸は、2つのパントテン酸分子が[[disulfide/ja|ジスルフィド]]結合した[[pantethine/ja|パンテチン]]とは異なる。高用量サプリメント(600 mg)として販売されているパンテチンは、心血管疾患の[[risk factor/ja|危険因子]]である[[LDL cholesterol/ja|LDLコレステロール]]の血中濃度を下げるのに有効である可能性がある。パントテン酸の食事による補充は、LDLに対して同じ効果を示さない。 | |||
===強化=== | |||
Global Fortification Data Exchangeによると、パントテン酸の欠乏は非常にまれであるため、食品を強化することを義務付けている国はない。 | |||
==吸収、代謝および排泄== | |||
{{Anchor|Absorption, metabolism and excretion}} | |||
食品中に含まれる場合、ほとんどのパントテン酸はCoAの形であるか、[[acyl carrier protein/ja|アシルキャリアタンパク質]](ACP)と結合している。 腸細胞がこのビタミンを吸収するためには、遊離のパントテン酸に変換されなければならない。 腸の[[Lumen (anatomy)/ja|腔]]内で、CoAとACPは[[Hydrolysis/ja|加水分解]]され、4'-ホスホパンテテインになる。その後、4'-ホスホパンテテインは[[Dephosphorylation/ja|脱リン酸化]]され、[[pantetheine/ja|パンテテイン]]となる。 その後、腸内酵素である[[Pantetheine hydrolase/ja|パンテテインヒドロラーゼ]]がパンテテインを加水分解して遊離パントテン酸にする。遊離パントテン酸は、ナトリウム依存性の飽和活性輸送系を介して腸管細胞に吸収される。摂取量が多い場合、この機構が飽和すると、パントテン酸の一部が受動拡散を介して追加的に吸収されることもある。全体として、摂取量が10倍になると、吸収率は10%に減少する。 | |||
パントテン酸は尿中に排泄される。これは、CoAから放出された後に起こる。尿中量は2.6 mg/日のオーダーであるが、数週間の実験的状況で被験者にビタミンを含まない食事を与えたところ、無視できる量まで減少した。 | |||
==欠乏症== | |||
{{Anchor|Deficiency}} | |||
ヒトにおけるパントテン酸欠乏症は非常にまれであり、十分に研究されていない。欠乏症が見られた数少ない例(第二次世界大戦中の捕虜、飢餓の犠牲者、または限定されたボランティア試験)では、ほぼすべての症状がパントテン酸の経口投与で回復した。欠乏症状は他の[[vitamin B/ja|ビタミンB]]欠乏症と類似している。CoAレベルの低下によるエネルギー産生障害があり、イライラ、[[Fatigue (medical)/ja|疲労]]、[[apathy/ja|無気力]]の症状を引き起こす可能性がある。アセチルコリン合成もまた障害されるため、欠乏症では神経症状が現れることがある。その他の症状としては、落ち着きのなさ、倦怠感、睡眠障害、吐き気、嘔吐、腹部のけいれんなどがある。 | |||
動物では、神経系、胃腸系、免疫系の障害、成長速度の低下、摂餌量の減少、皮膚病変や毛並みの変化、脂質代謝や糖質代謝の変化などの症状が見られる。げっ歯類では毛髪の色が抜けることがあるため、パントテン酸はヒトの白髪を予防・治療するサプリメントとして販売されるようになった(ヒトでの臨床試験は行われていないが)。 | |||
パントテン酸の状態は、全血濃度または24時間尿中排泄量のどちらかを測定することで評価できる。ヒトでは、全血値が1 μmol/L未満、尿中排泄量が4.56 mmol/日未満は低値とみなされる。 | |||
==動物栄養学== | |||
[[File:Pantothenic acid biosynthesis.svg|thumb|パントテン酸生合成]] | |||
[[File:Pantothenic acid biosynthesis.svg|thumb| | パントテン酸カルシウムとデキスパンテノール(D-パンテノール)は、欧州食品安全機関(EFSA)により動物飼料への添加物として承認されている。豚には8~20 mg/kg、家禽には10~15 mg/kg、魚には30~50 mg/kg、ペットには8~14 mg/kgの飼料を与える。これらは推奨濃度であり、必要量と考えられている値よりも高めに設定されている。飼料を補給することにより、ヒトが消費する組織、すなわち肉や、卵のパントテン酸濃度が上昇するという証拠もあるが、消費者の安全性に懸念はない。 | ||
反芻動物におけるパントテン酸の食事性要求量は確立されていない。[[Rumen/ja|反芻胃]]微生物によるパントテン酸の合成は、食餌量の20~30倍と思われる。去勢子牛の反芻胃におけるパントテン酸の正味微生物合成量は、1 日あたり消費される消化可能有機物 1kg あたり 2.2 mg/kg と推定されている。理論要求量の5~10倍のパントテン酸を補給しても、肥育牛の成長成績は改善しなかった。 | |||
==合成== | |||
{{Anchor|Synthesis}} | |||
=== | ===生合成=== | ||
細菌はアスパラギン酸とバリンというアミノ酸の前駆体からパントテン酸を合成する。アスパラギン酸は[[β-alanine/ja|β-アラニン]]に変換される。バリンのアミノ基はケト-[[Moiety (chemistry)|部位]]で置換され、[[α-ketoisovalerate/ja|α-ケトイソバレレート]]が得られ、次いでメチル基の転移後にα-ケトパント酸が形成され、還元後にD-パント酸(パント酸としても知られる)が形成される。β-アラニンとパント酸は縮合し、パントテン酸を形成する(図参照)。 | |||
===工業的合成=== | |||
パントテン酸の工業的合成は[[isobutyraldehyde/ja|イソブチルアルデヒド]]と[[formaldehyde/ja|ホルムアルデヒド]]の[[aldol condensation/ja|アルドール縮合]]から始まる。得られた[[hydroxypivaldehyde/ja|ヒドロキシピバルデヒド]]はその[[cyanohydrin/ja|シアノヒドリン]]誘導体に変換され、これが環化されて[[racemic/ja|ラセミ体]]のパントラクトンが得られる。この一連の反応は1904年に初めて発表された。 | |||
:[[File:Pantothenic acid synthesis.svg|550px]]。 | |||
:[[File:Pantothenic acid synthesis.svg| | ビタミンの合成は、例えば[[quinine/ja|キニーネ]]を用いたラクトンの[[Chiral resolution/ja|分解]]、次いでβ-アラニンのカルシウム塩またはナトリウム塩で処理することによって完成する。 | ||
==歴史== | |||
{{Anchor|History}} | |||
{{Further|Vitamin#History}} | {{Further/ja|Vitamin/ja#History}} | ||
ビタミンは1912年にポーランドの生化学者[[:en:Casimir Funk|カシミール・フンク]]によって作られた造語で、彼は生命維持に不可欠な水溶性の微量栄養素の複合体を単離し、その全てが[[amine/ja|アミン]]であると推定した。後にこの推定が事実でないことが判明すると、名前から "e "が取り除かれ、"vitamin "となった。ビタミンの命名法はアルファベット順であり、[[:en:Elmer McCollum|エルマー・マッコラム]]はこれらを脂溶性Aと水溶性Bと呼んだ。 | |||
パントテン酸の必須性は、1933年に[[:en:Roger J. Williams|ロジャー・J・ウィリアムズ]]によって酵母の成長に必要であることを示すことによって発見された。その3年後、ElvehjemとJukesは、それがニワトリの成長と抗皮膚炎因子であることを証明した。ウィリアムズはこの化合物を「パントテン酸」と命名し、ギリシャ語の「パントテン(pantothen)」に由来する。その理由は、パントテン酸がほとんどすべての食品に含まれていることを発見したからである。ウィリアムズは1940年に化学構造を決定した。1953年、[[:en:Fritz Lipmann|フリッツ・リップマン]]は[[:en:Nobel Prize in Physiology or Medicine|ノーベル生理学・医学賞]]を共有した。1946年に発表した「コエンザイムAとその中間代謝における重要性の発見」に対してである。 | |||
{{Vitamins/ja}} | |||
{{Vitamins}} | {{Dietary supplement/ja}} | ||
{{Dietary supplement}} | {{Metabolism of vitamins, coenzymes, and cofactors/ja}} | ||
{{Metabolism of vitamins, coenzymes, and cofactors}} | {{Preparations for treatment of wounds and ulcers/ja}} | ||
{{Preparations for treatment of wounds and ulcers}} | {{Cholinergics/ja}} | ||
{{Cholinergics}} | |||
{{DEFAULTSORT:Pantothenic Acid}} | {{DEFAULTSORT:Pantothenic Acid}} | ||
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Latest revision as of 21:14, 20 February 2024
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Names | |
---|---|
Preferred IUPAC name
3-[(2R)-2,4-Dihydroxy-3,3-dimethylbutanamido]propanoic acid | |
Systematic IUPAC name
3-[(2R)-(2,4-Dihydroxy-3,3-dimethylbutanoyl)amino]propanoic acid | |
Identifiers | |
3D model (JSmol)
|
|
3DMet | |
1727062, 1727064 (R) | |
ChEBI | |
ChEMBL | |
ChemSpider | |
DrugBank | |
EC Number |
|
KEGG | |
MeSH | Pantothenic+Acid |
PubChem CID
|
|
RTECS number |
|
UNII |
|
| |
| |
Properties | |
C9H17NO5 | |
Molar mass | 219.237 g·mol−1 |
Appearance | Yellow oil Colorless crystals (Ca2+ salt) |
Odor | Odorless |
Density | 1.266 g/cm3 1.32 g/cm3 (Ca2+ salt) |
Melting point | 183.833 °C (362.899 °F; 456.983 K) 196–200 °C (385–392 °F; 469–473 K) decomposes (Ca2+ salt) |
Very soluble | |
Solubility | Very soluble in C6H6, ether |
log P | −1.416 |
Acidity (pKa) | 4.41 |
Basicity (pKb) | 9.698 |
Chiral rotation ([α]D)
|
+37.5° +24.3° (Ca2+ salt) |
Hazards | |
NFPA 704 (fire diamond) | |
Lethal dose or concentration (LD, LC): | |
LD50 (median dose)
|
> 10 mg/g (Ca2+ salt) |
Related compounds | |
Related alkanoic acids
|
Arginine/ja Hopantenic acid/ja 4-(γ-Glutamylamino)butanoic acid/ja |
Related compounds
|
パンテノール |
パントテン酸(vitamin B5)はビタミンB群の一種で、必須栄養素である。すべての動物は、脂肪酸の代謝に不可欠な補酵素A(CoA)を合成し、タンパク質、炭水化物、脂肪を合成・代謝するためにパントテン酸を必要とする。
パントテン酸はパント酸とβ-アラニンの組み合わせである。その名前はギリシア語に由来する。πάντοθενに由来する。パントテン酸は、少なくとも少量であれば、ほとんどすべての食品に含まれているためである。パントテン酸の欠乏は、ヒトでは非常にまれである。パントテン酸ナトリウムや遊離パントテン酸よりも化学的に安定しているため、製品の保存期間が長くなる。
定義

パントテン酸は水溶性のビタミンで、ビタミンB群の一つである。アミノ酸のβ-アラニンとパント酸から合成される(生合成および補酵素Aの構造図を参照)。ビタミンEやビタミンKがビタマーとして知られるいくつかの化学的に関連した形で存在するのとは異なり、パントテン酸は1つの化合物である。多くの酵素プロセスの補酵素である補酵素A(CoA)の合成における出発化合物である。
コエンザイムAの生合成に使用

パントテン酸は、5段階の過程を経てCoAの前駆体となる。 生合成にはパントテン酸、システイン、4当量のATPが必要である(図参照)。
- パントテン酸は酵素パントテン酸キナーゼによって4′-ホスホパントテン酸にリン酸化される。これはCoAの生合成におけるコミットメントステップであり、ATPを必要とする。
- ホスホパントテノイルシステイン合成酵素によって4′-ホスホパントテネートにシステインが付加され、4'-ホスホ-N-パントテノイルシステイン(PPC)が形成される。このステップはATP加水分解と結合している。
- PPCはホスホパントテノイルシステイン脱炭酸酵素によって4′-ホスホパンテテインに脱炭酸される。
- 4′-ホスホパンテテインは酵素ホスホパンテインアデニルトランスフェラーゼによってアデニル化(正しくはAMP化)され、脱ホスホ-CoAを形成する。
- 最後に、脱ホスホ-CoAは酵素脱ホスホコエンザイムAキナーゼによってコエンザイムAにリン酸化される。この最終段階にもATPが必要である。
この経路は最終産物阻害によって抑制されるが、これはCoAが第一段階を担う酵素であるパントテン酸キナーゼの競合的阻害剤であることを意味する。
コエンザイムAはクエン酸サイクルの反応機構に必要である。この過程は体内の主要な異化経路であり、燃料として炭水化物、アミノ酸、脂質などの細胞の構成要素を分解するのに不可欠である。CoAはエネルギー代謝において、ピルビン酸がアセチル-CoAとしてトリカルボン酸サイクル(TCAサイクル)に入るため、またα-ケトグルタル酸がサイクルでスクシニル-CoAに変換されるために重要である。CoAはアシル化やアセチル化にも必要であり、それらは例えばシグナル伝達や様々な酵素機能に関与している。CoAとしての機能に加えて、この化合物はアセチル-CoAおよび他の関連化合物を形成するためのアシル基キャリアとして働くことができる;これは細胞内で炭素原子を輸送する方法である。CoAはまた、脂肪酸合成に必要なアシルキャリアタンパク質(ACP)の形成にも必要である。その合成は、チアミンや葉酸などの他のビタミンとも結びついている。
食事の推奨量
米国医学研究所(IOM)は、1998年にビタミンB群の推定平均所要量(EAR)と推奨食事許容量(RDA)を更新した。その時点では、パントテン酸のEARとRDAを設定するのに十分な情報がなかった。このような場合、理事会は、後日、AIがより正確な情報に取って代わられる可能性があることを理解した上で、適正摂取量(AAI)を設定している。
14歳以上の10代と成人に対する現在のAIは、5 mg/日である。これは、典型的な食事の場合、尿中排泄量は約2.6 mg/日であり、食物結合パントテン酸の生物学的利用能はおよそ50%であるという観察に基づいている。妊娠中のAIは6 mg/日である。授乳期のAIは7 mg/日である。12ヵ月までの乳児のAIは1.8 mg/日である。1~13歳の子どもについては、AIは2~4 mg/日と年齢とともに増加する。 EAR、RDA、AI、ULを総称して食事摂取基準(DRI)と呼ぶ。
年齢層 | 年齢 | 十分な摂取量 |
---|---|---|
乳幼児 | 0–6 ヶ月 | 1.7 mg |
乳幼児 | 7–12 ヶ月 | 1.8 mg |
子供 | 1–3 歳 | 2 mg |
子供 | 4–8 歳 | 3 mg |
子供 | 9–13 歳 | 4 mg |
成人男女 | 14+ 歳 | 5 mg |
妊婦 | (vs. 5) | 6 mg |
授乳中の女性 | (vs. 5) | 7 mg |
多くの栄養素について、米国農務省は食品成分データと食品消費調査の結果を組み合わせて平均消費量を推定しているが、調査や報告書にはパントテン酸は分析に含まれていない。成人の1日摂取量に関するあまり正式でない推定値では、約4~7 mg/日と報告されている。
欧州食品安全機関(EFSA)は、これらの情報をまとめて食事摂取基準値(Dietary Reference Values)と呼んでおり、RDAの代わりに人口摂取基準(Population Reference Intake:PRI)、EARの代わりに平均必要量(Average Requirement)を用いている。AIとULの定義は米国と同じである。11歳以上の女性と男性については、十分摂取量(AI)は5 mg/日とされている。妊娠中のAIは5 mg/日、授乳期は7 mg/日である。1~10歳の子供のAIは4 mg/日である。これらのAIは米国のAIと同様である。
安全性
安全性に関しては、IOMは十分なエビデンスがある場合、ビタミンとミネラルの耐容上限摂取量レベル(UL)を設定している。パントテン酸の場合、高用量摂取による副作用に関するヒトでのデータがないため、ULは設定されていない。EFSAも安全性の問題を検討し、パントテン酸のULを設定するには十分な証拠がないという、米国と同じ結論に達した。
表示要件
米国の食品および栄養補助食品の表示目的では、1食あたりの摂取量は1日当たりの摂取価値(Daily Value)のパーセンテージ(%DV)で表される。パントテン酸の表示目的では、デイリーバリューの100%は10 mgであったが、2016年5月27日付でAIと一致させるために5 mgに改訂された。 更新された表示規制への準拠は、年間食品売上高がUS$10 百万以上の製造業者については2020年1月1日までに、それ以下の製造業者については2021年1月1日までに義務付けられた。新旧の成人一日摂取量の表は基準一日摂取量に掲載されている。
摂取源
食事
パントテン酸を含む食品としては、乳製品や卵などの動物性食品がある。植物性食品では、ジャガイモ、トマト製品、オート麦、ひまわりの種、アボカドなどがよい。キノコ類もよい摂取源となる。全粒穀物もビタミンの供給源だが、白米や白玉粉を作るために製粉すると、全粒穀物の外層に含まれるパントテン酸の多くが除去されてしまう。動物用飼料では、アルファルファ、穀類、フィッシュミール、ピーナッツミール、糖蜜、米ぬか、小麦ふすま、酵母が最も重要な供給源である。
サプリメント
パントテン酸の栄養補助食品は、一般的にパントフェノール(またはパンテノール)を使用する。常温可能な可能なアナログを使用するのが一般的であり、消費されるとパントテン酸に変換される。パントテン酸カルシウムは、酸、アルカリ、熱などの安定性を悪化させる要因に対してパントテン酸よりも耐性があるため、製造に使用されることがある。栄養補助食品に含まれるパントテン酸の量は、最大1,000 mg(成人の必要摂取量の200倍)まで含まれることがあるが、そのような多量摂取が有益であるという証拠はない。WebMDによると、パントテン酸サプリメントには主張されている用途の長いリストがあるが、そのいずれをも支持する科学的証拠は不十分である。
栄養補助食品としてのパントテン酸は、2つのパントテン酸分子がジスルフィド結合したパンテチンとは異なる。高用量サプリメント(600 mg)として販売されているパンテチンは、心血管疾患の危険因子であるLDLコレステロールの血中濃度を下げるのに有効である可能性がある。パントテン酸の食事による補充は、LDLに対して同じ効果を示さない。
強化
Global Fortification Data Exchangeによると、パントテン酸の欠乏は非常にまれであるため、食品を強化することを義務付けている国はない。
吸収、代謝および排泄
食品中に含まれる場合、ほとんどのパントテン酸はCoAの形であるか、アシルキャリアタンパク質(ACP)と結合している。 腸細胞がこのビタミンを吸収するためには、遊離のパントテン酸に変換されなければならない。 腸の腔内で、CoAとACPは加水分解され、4'-ホスホパンテテインになる。その後、4'-ホスホパンテテインは脱リン酸化され、パンテテインとなる。 その後、腸内酵素であるパンテテインヒドロラーゼがパンテテインを加水分解して遊離パントテン酸にする。遊離パントテン酸は、ナトリウム依存性の飽和活性輸送系を介して腸管細胞に吸収される。摂取量が多い場合、この機構が飽和すると、パントテン酸の一部が受動拡散を介して追加的に吸収されることもある。全体として、摂取量が10倍になると、吸収率は10%に減少する。
パントテン酸は尿中に排泄される。これは、CoAから放出された後に起こる。尿中量は2.6 mg/日のオーダーであるが、数週間の実験的状況で被験者にビタミンを含まない食事を与えたところ、無視できる量まで減少した。
欠乏症
ヒトにおけるパントテン酸欠乏症は非常にまれであり、十分に研究されていない。欠乏症が見られた数少ない例(第二次世界大戦中の捕虜、飢餓の犠牲者、または限定されたボランティア試験)では、ほぼすべての症状がパントテン酸の経口投与で回復した。欠乏症状は他のビタミンB欠乏症と類似している。CoAレベルの低下によるエネルギー産生障害があり、イライラ、疲労、無気力の症状を引き起こす可能性がある。アセチルコリン合成もまた障害されるため、欠乏症では神経症状が現れることがある。その他の症状としては、落ち着きのなさ、倦怠感、睡眠障害、吐き気、嘔吐、腹部のけいれんなどがある。
動物では、神経系、胃腸系、免疫系の障害、成長速度の低下、摂餌量の減少、皮膚病変や毛並みの変化、脂質代謝や糖質代謝の変化などの症状が見られる。げっ歯類では毛髪の色が抜けることがあるため、パントテン酸はヒトの白髪を予防・治療するサプリメントとして販売されるようになった(ヒトでの臨床試験は行われていないが)。
パントテン酸の状態は、全血濃度または24時間尿中排泄量のどちらかを測定することで評価できる。ヒトでは、全血値が1 μmol/L未満、尿中排泄量が4.56 mmol/日未満は低値とみなされる。
動物栄養学

パントテン酸カルシウムとデキスパンテノール(D-パンテノール)は、欧州食品安全機関(EFSA)により動物飼料への添加物として承認されている。豚には8~20 mg/kg、家禽には10~15 mg/kg、魚には30~50 mg/kg、ペットには8~14 mg/kgの飼料を与える。これらは推奨濃度であり、必要量と考えられている値よりも高めに設定されている。飼料を補給することにより、ヒトが消費する組織、すなわち肉や、卵のパントテン酸濃度が上昇するという証拠もあるが、消費者の安全性に懸念はない。
反芻動物におけるパントテン酸の食事性要求量は確立されていない。反芻胃微生物によるパントテン酸の合成は、食餌量の20~30倍と思われる。去勢子牛の反芻胃におけるパントテン酸の正味微生物合成量は、1 日あたり消費される消化可能有機物 1kg あたり 2.2 mg/kg と推定されている。理論要求量の5~10倍のパントテン酸を補給しても、肥育牛の成長成績は改善しなかった。
合成
生合成
細菌はアスパラギン酸とバリンというアミノ酸の前駆体からパントテン酸を合成する。アスパラギン酸はβ-アラニンに変換される。バリンのアミノ基はケト-部位で置換され、α-ケトイソバレレートが得られ、次いでメチル基の転移後にα-ケトパント酸が形成され、還元後にD-パント酸(パント酸としても知られる)が形成される。β-アラニンとパント酸は縮合し、パントテン酸を形成する(図参照)。
工業的合成
パントテン酸の工業的合成はイソブチルアルデヒドとホルムアルデヒドのアルドール縮合から始まる。得られたヒドロキシピバルデヒドはそのシアノヒドリン誘導体に変換され、これが環化されてラセミ体のパントラクトンが得られる。この一連の反応は1904年に初めて発表された。
ビタミンの合成は、例えばキニーネを用いたラクトンの分解、次いでβ-アラニンのカルシウム塩またはナトリウム塩で処理することによって完成する。
歴史
ビタミンは1912年にポーランドの生化学者カシミール・フンクによって作られた造語で、彼は生命維持に不可欠な水溶性の微量栄養素の複合体を単離し、その全てがアミンであると推定した。後にこの推定が事実でないことが判明すると、名前から "e "が取り除かれ、"vitamin "となった。ビタミンの命名法はアルファベット順であり、エルマー・マッコラムはこれらを脂溶性Aと水溶性Bと呼んだ。
パントテン酸の必須性は、1933年にロジャー・J・ウィリアムズによって酵母の成長に必要であることを示すことによって発見された。その3年後、ElvehjemとJukesは、それがニワトリの成長と抗皮膚炎因子であることを証明した。ウィリアムズはこの化合物を「パントテン酸」と命名し、ギリシャ語の「パントテン(pantothen)」に由来する。その理由は、パントテン酸がほとんどすべての食品に含まれていることを発見したからである。ウィリアムズは1940年に化学構造を決定した。1953年、フリッツ・リップマンはノーベル生理学・医学賞を共有した。1946年に発表した「コエンザイムAとその中間代謝における重要性の発見」に対してである。