Low-carbohydrate diet/ja: Difference between revisions
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{{About/ja| | {{About/ja|ライフスタイルの選択としての低炭水化物ダイエット、または減量のためのダイエット|てんかん治療としての低炭水化物ダイエットに関する情報|Ketogenic diet/ja}} | ||
[[File:Kale_%26_Poached_Eggs_Salad_(8733071700).jpg|thumb|低炭水化物料理の一例、調理したケールとポーチドエッグ]] | [[File:Kale_%26_Poached_Eggs_Salad_(8733071700).jpg|thumb|低炭水化物料理の一例、調理したケールとポーチドエッグ]] | ||
'''低炭水化物ダイエット'''では、平均的な[[diet (nutrition)/ja|ダイエット]]と比較して[[carbohydrate/ja|炭水化物]]の消費を制限する。炭水化物を多く含む食品(例えば、[[sugar/ja|砂糖]]、[[bread/ja|パン]]、[[pasta/ja|パスタ]])を制限し、[[fat/ja|脂肪]]と[[protein (nutrient)/ja|タンパク質]]の割合が高い食品(例えば、 [[meat/ja|肉]]、[[Poultry/ja#Poultry as food|鶏肉]]、[[fish (food)/ja|魚]]、[[shellfish/ja|貝類]]、[[egg (food)/ja|卵]]、[[cheese/ja|チーズ]]、[[nut (fruit)/ja|ナッツ]]、[[List of edible seeds/ja|種子]])や低炭水化物食品(例. 例えば[[spinach/ja|ほうれん草]]、[[kale/ja|ケール]]、[[chard/ja|チャード]]、[[collards/ja|コラード]]、その他の繊維質の[[vegetable/ja|野菜]])。 | '''低炭水化物ダイエット'''では、平均的な[[diet (nutrition)/ja|ダイエット]]と比較して[[carbohydrate/ja|炭水化物]]の消費を制限する。炭水化物を多く含む食品(例えば、[[sugar/ja|砂糖]]、[[bread/ja|パン]]、[[pasta/ja|パスタ]])を制限し、[[fat/ja|脂肪]]と[[protein (nutrient)/ja|タンパク質]]の割合が高い食品(例えば、 [[meat/ja|肉]]、[[Poultry/ja#Poultry as food|鶏肉]]、[[fish (food)/ja|魚]]、[[shellfish/ja|貝類]]、[[egg (food)/ja|卵]]、[[cheese/ja|チーズ]]、[[nut (fruit)/ja|ナッツ]]、[[List of edible seeds/ja|種子]])や低炭水化物食品(例. 例えば[[spinach/ja|ほうれん草]]、[[kale/ja|ケール]]、[[chard/ja|チャード]]、[[collards/ja|コラード]]、その他の繊維質の[[vegetable/ja|野菜]])。 | ||
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低炭水化物食の1つである[[ketogenic diet/ja|ケトジェニックダイエット]]は、[[epilepsy/ja|てんかん]]を治療するための医薬品として最初に確立された。それは[[:en:celebrity endorsement|有名人の推薦]]によって減量のための人気のある[[dieting/ja|食事療法]]となったが、この目的のための際立った利点の証拠はなく、この食事療法は[[adverse effect/ja|副作用]]のリスクを伴い、[[:en:British Dietetic Association|英国栄養士会]]は2018年に「避けるべき最悪のセレブダイエットトップ5」の1つに挙げた。 | 低炭水化物食の1つである[[ketogenic diet/ja|ケトジェニックダイエット]]は、[[epilepsy/ja|てんかん]]を治療するための医薬品として最初に確立された。それは[[:en:celebrity endorsement|有名人の推薦]]によって減量のための人気のある[[dieting/ja|食事療法]]となったが、この目的のための際立った利点の証拠はなく、この食事療法は[[adverse effect/ja|副作用]]のリスクを伴い、[[:en:British Dietetic Association|英国栄養士会]]は2018年に「避けるべき最悪のセレブダイエットトップ5」の1つに挙げた。 | ||
==定義と分類== | |||
{{Anchor|Definition and classification}} | |||
=== | === 大栄養素の比率 === | ||
低炭水化物ダイエットの大栄養素比率は標準化されていない。2018年じてん、"低炭水化物ダイエット"の定義に矛盾があるため、研究が複雑になっている。 | |||
[[:en:National Lipid Association|全米脂質学会]]は、低炭水化物食を、炭水化物からのカロリーが25%以下のものと定義している。栄養・ライフスタイルタスクフォースは、低炭水化物食を炭水化物からのカロリーが25%以下のものと定義し、超低炭水化物食を炭水化物の含有量が10%以下のものと定義している。低炭水化物食に関する2016年の[[:en:review article|レビュー]]では、1日あたりの炭水化物量が50 g(総カロリーの10%未満)の食事を「超低」低炭水化物食、炭水化物からのカロリーが40%の食事を「軽度」低炭水化物食と分類している。英国[[:en:National Health Service|国民保健サービス]]は、"炭水化物は、健康的でバランスの取れた食事における身体の主なエネルギー源であるべきである"と勧告している。 | |||
=== 食材=== | |||
[[File:Kale-Bundle.jpg|thumb|alt=カーリーケールの葉の束.|他の葉物野菜と同様、[[curly kale/ja|カーリーケール]]は炭水化物が少ない食品である]] | |||
[[File:Kale-Bundle.jpg|thumb|alt= | 食事に含まれる炭水化物の量よりもむしろ質が健康にとって重要であり、高繊維質のゆっくり[[digestion/ja|消化]]する炭水化物が豊富な食品は健康によく、高度に精製された甘い食品はそうではないという証拠がある。健康状態のために食事療法を選択する人は、個々の要求に合わせて食事療法を行うべきである。 | ||
ほとんどの野菜は低炭水化物または中程度の炭水化物食品である(一部の低炭水化物ダイエットでは、[[Dietary fiber/ja|ファイバー]]は栄養価の高い炭水化物ではないため除外される)。[[potato/ja|ジャガイモ]]、[[carrots/ja|ニンジン]]、[[maize/ja|トウモロコシ]]、米などの一部の野菜はデンプンを多く含む。ほとんどの低炭水化物ダイエットプランでは、[[broccoli/ja|ブロッコリー]]、[[spinach/ja|ほうれん草]]、[[kale/ja|ケール]]、[[lettuce/ja|レタス]]、[[cicumbers/ja|キュウリ]]、[[cauliflower/ja|カリフラワー]]、[[Brussels sprouts/ja|芽キャベツ]]、[[capsicum/ja|ピーマン]]などの野菜や、ほとんどの緑の葉野菜に対応している。 | |||
== 権威者の意見 == | |||
{{Anchor|Authority Opinions}} | |||
[[:en:National Academy of Medicine|米国医学アカデミー]]は、1日平均130 gの炭水化物を推奨している。また、[[:en:Food and Agriculture Organization|FAO]]と[[World Health Organization/ja|WHO]]も同様に、食事エネルギーの大部分を炭水化物から摂取することを推奨している。2015-2020年版の[[:en:Dietary Guidelines for Americans|アメリカ人のための食生活指針]]では、低炭水化物食は推奨されておらず、代わりに低脂肪食が推奨されている。 | |||
炭水化物は[[macronutrient/ja|大栄養素]]特有の"太りやすい"栄養素であると誤って非難され、多くのダイエッターが炭水化物を多く含む食品を排除することで、食事の栄養価を損なうように誤解されている。低炭水化物ダイエットの支持者は、低炭水化物ダイエットは、最初はバランスの取れた食事よりもわずかに大きな体重減少を引き起こすことができるという研究を強調するが、そのような利点は持続しない。長期的な体重維持の成功は、摂取カロリーによって決まるのであって、多量栄養素の比率によって決まるのではない。 | |||
[[zone diet/ja|ゾーンダイエット]]や[[south beach diet/ja|サウスビーチダイエット]]などの一部のダイエット法が "低炭水化物"として宣伝されていることに、世間は混乱している。 | |||
=== 炭水化物-インスリン仮説=== | |||
=== | [[:en:Gary Taubes|ゲイリー・タウベス]]や[[:en:David Ludwig|デイヴィッド・ルートヴィヒ]]を含む低炭水化物ダイエットの提唱者たちは、炭水化物はインスリンレベルを上昇させ、脂肪を過度に蓄積させるため、特異的に太りやすいとする「炭水化物-インスリン仮説」を提唱している。この仮説は、インスリンの作用と脂肪の蓄積、肥満との間にそのような関連があるという十分な証拠がないという、既知のヒト生物学に反しているように見える。この仮説は、低炭水化物ダイエットは、[[Atkin's diet/ja|アトキンスダイエット]]の約束である「永遠にやせ続けるための高カロリーの方法」と一致し、400〜600kcal(キロカロリー)/日のエネルギー消費量の増加という「代謝上の利点」を提供すると予測した。 | ||
2012年、タウベスは[[:en:Laura and John Arnold Foundation|ローラ&ジョン・アーノルド財団]]からの資金提供を受け、「栄養科学イニシアチブ(NuSI)」を共同で設立した。「栄養学のための[[:en:Manhattan Project|マンハッタン計画]]」を実施し、仮説を検証するために2億ドル以上を集めることを目的としていた。中間結果は''[[:en:American Journal of Clinical Nutrition|American Journal of Clinical Nutrition]]に発表されたが、低炭水化物食が他の組成の食事と比較して有利であるという説得力のある証拠は得られなかった。この研究では、ケトジェニック食が呼吸室で測定した24時間のエネルギー消費量を増加させるという、わずかな(~100kcal/日)ながらも統計学的に有意な効果を示したが、その効果は時間の経過とともに衰えていった。結局のところ、超低カロリーのケトジェニック食(炭水化物5%)は、同じカロリーの非特異的な食事と比較して「脂肪量の有意な減少とは関連しなかった」のであり、有用な「代謝上の利点」はなかったのである。2017年、このプロジェクトを支援するために雇われた[[:en:National Institutes of Health|米国立衛生研究所]]の研究者ケビン・ホールは、炭水化物-インスリン仮説は[[:en:scientific method||実験によって捏造された]]と書いた。ホールは、"肥満の増加は主に精製された炭水化物の消費の増加によるものかもしれないが、そのメカニズムは炭水化物-インスリンモデルが提唱するものとは全く異なる可能性が高い"と書いた。 | |||
== 健康の側面 == | |||
{{Anchor|Health aspects}} | |||
=== アドヒアランス === | |||
長期的には、同じ熱量の食事療法でも、食事療法プログラムをどれだけ忠実に守れるかという差別化要因を除けば、減量効果は同じであることが繰り返し判明している。低脂肪食、低炭水化物食、[[Mediterranean diet/ja|地中海食]]を摂取しているグループを比較した研究では、6ヶ月の時点ではまだ低炭水化物食を守っている人が多かったが、その後状況は逆転した。2年後、低炭水化物群では、脱落や脱落の発生率が最も高かった。これは、低炭水化物ダイエットの食物の選択肢が比較的限られているためかもしれない。 | |||
=== 体重=== | |||
=== | 短期および中期的には、低炭水化物食を摂っている人のほうが[[low-fat diet/ja|低脂肪食]]を摂っている人よりも体重が減少する。[[:en:Endocrine Society|内分泌学会]]は、「摂取カロリーを一定に保った場合、......体脂肪蓄積は、食事中の脂肪対炭水化物の量が非常に顕著に変化しても影響を受けないようである」と述べている。このような食事をしている人は、当初は約100kcal/日に相当するごくわずかな体重減少が見られるが、その優位性は時間の経過とともに減少し、最終的には取るに足らないものとなる。2022年に発表されたコクラン・レビューでは、2年間という長期間に渡って調査され、低炭水化物ダイエットを続けることに、バランスの取れたダイエットと比較して、何のメリットもないことが判明している。 | ||
低脂肪ダイエットと低炭水化物ダイエットを比較する研究の多くは質が低く、大きな効果を報告した研究は、方法論的に健全な研究に比べて不釣り合いな注目を集めてきた。2018年のレビューでは、"より質の高いメタアナリシスでは、2つのダイエット法の間で体重減少の差はほとんどないか、全くないと報告されている "と述べている。質の低い[[meta-analyses/ja|メタアナリシス]]は、低炭水化物ダイエットの効果について好意的に報告する傾向がある:[[systematic review/ja|システマティックレビュー]]は、10件のメタアナリシスのうち8件が、体重減少の結果が[[:en:publication bias|公表バイアス]]の影響を受けた可能性があるかどうかを評価し、そのうち7件が肯定的な結論を出したと報告している。2017年のレビューでは、低炭水化物ダイエットを含む様々なダイエット法が同様の体重減少結果を達成しており、それは主にダイエットの種類よりも[[calorie restriction/ja|カロリー制限]]とアドヒアランスによって決定されると結論付けている。 | |||
=== 心血管系の健康=== | |||
低炭水化物食を2年未満続けても、心血管系の健康マーカーは悪化しないことがわかった。しかし、低炭水化物食を長年続けると、心臓病で死亡する可能性がある。低炭水化物食を長期に続けると、総コレステロールやLDLコレステロールの増加といった脂質パラメータに悪影響を及ぼす。これは、低炭水化物ダイエットを行う人の多くが[[animal source foods/ja|動物性食品]]を多く食べ、[[Dietary fiber/ja|繊維]]や微量栄養素を豊富に含む果物や野菜をあまり食べないためである。 | |||
[[:en:American College of Cardiology|米国心臓病学会]]は、超低炭水化物食を希望する人に対して、臨床医と患者との話し合いを推奨している。超低炭水化物食は、長期的にはLDL-C値と心血管系の健康を悪化させる可能性があることを説明すべきである。動脈硬化のある人は低炭水化物食を避けるように助言すべきである。 | |||
=== 糖尿病 === | |||
[[type 1 diabetes/ja|1型糖尿病]]の患者に対する低炭水化物食の有効性に関する証拠は限られている。特定の個人にとっては、低炭水化物療法と注意深く管理された[[insulin/ja|インスリン]]投与を組み合わせることは実行可能かもしれない。しかし、これを維持するのは困難であり、食事療法による健康への悪影響が懸念される。一般に、1型糖尿病患者には、個々に合わせた食事計画に従うことが勧められる。 | |||
食事中の炭水化物の割合は[[type 2 diabetes/ja|2型糖尿病]]のリスクとは関連していないが、特定の高炭水化物食品(砂糖入り飲料や白米など)を含む食事がリスクの増加と関連しているという証拠がいくつかある。炭水化物食品の摂取を減らすことで、2型糖尿病の[[biomarker/ja|バイオマーカー]]が減少する可能性を示す証拠もある。 | |||
2019年の[[American Diabetes Association/ja|米国糖尿病学会]](ADA)の糖尿病および糖尿病予備群の成人に対する栄養療法に関するコンセンサスレポートでは、"糖尿病患者の全体的な炭水化物摂取量を減らすことは、血糖値(血糖値)を改善するための最も多くのエビデンスを示しており、個人のニーズや嗜好に合ったさまざまな食事パターンに適用することができる"と述べられている。しかし、別の情報源によれば、低炭水化物食が、一般的に消費カロリーの40%以上を炭水化物が占める従来の[[healthy diet/ja|健康的な食事]]よりも優れているという良い証拠はないとしている。低炭水化物食は、2型糖尿病患者の[[kidney function/ja|腎機能]]に影響を与えない。 | |||
炭水化物の摂取を制限すると、長期的な体重減少はないものの、一般に血糖コントロールが改善する。低炭水化物食は2型糖尿病患者の減量に有用であるが、「一貫して優れていると証明されたアプローチはない」。ADAによれば、糖尿病患者は "個々の大栄養素や微量栄養素、あるいは単一の食品に注目するのではなく、健康的な食事パターンを身につける "べきである。食事中の炭水化物は、「野菜、豆類、果物、乳製品(牛乳とヨーグルト)、全粒穀物」から摂取し、高度に精製された食品や糖分の多い飲み物は避けるべきだと推奨している。ADAはまた、"糖尿病患者の全体的な炭水化物摂取量を減らすことは、血糖値を改善するための最も多くのエビデンスを示しており、個人のニーズや嗜好に合った様々な食事パターンに適用することができる"と書いている。血糖目標値を達成できない2型糖尿病患者や、抗血糖医薬品を減らすことが優先される場合、ADAは低炭水化物食または超低炭水化物食が実行可能なアプローチであるとしている。 | |||
2021年の包括的レビューによると、糖尿病患者において、低炭水化物食は高炭水化物食や低脂肪食よりも体重減少に効果がないことがわかった。 | |||
=== 運動と疲労 === | |||
低炭水化物食は、激しい運動努力に対する[[endurance/ja|持久力]]能力を低下させることが判明しており、そのような努力後に枯渇した筋肉[[glycogen/ja|グリコーゲン]]は、低炭水化物食を摂取してもゆっくりとしか補充されない。運動トレーニング中の不十分な炭水化物摂取は[[metabolic acidosis/ja|代謝性アシドーシス]]を引き起こし、これが観察されたパフォーマンスの低下の原因である可能性がある。 | |||
=== 安全性 === | |||
低炭水化物食は、[[ketosis/ja|ケトーシス]]と呼ばれる状態で、脳、心臓、腎臓などの重要な臓器にエネルギーを供給する[[ketone bodies/ja|ケトン体]]を肝臓で作るために使われる脂肪酸の代謝を広範囲に引き起こす。ケトーシスには、[[alcoholism/ja|アルコール中毒]]や[[diabetes/ja|糖尿病]]など他の原因があることもある。ケトン体の過剰な蓄積は、ケトン体の産生が消費よりも多い場合に起こり、生命を脅かす可能性のある状態である[[ketoacidosis/ja|ケトアシドーシス]]に至る。まれに、低炭水化物ケトジェニック食も、特に合併症を有する患者ではケトアシドーシスを引き起こすことがある。[[Atkins diet/ja|アトキンス]]やサウスビーチダイエットなどの低炭水化物ダイエットを行っている人にケトアシドーシスが発生したという症例報告がまれにある。このため、ケトアシドーシスは低炭水化物ダイエットの潜在的危険因子であると考えるべきであると指摘されている。 | |||
動物由来のタンパク質や脂肪を多く含む高炭水化物食や低炭水化物食は、死亡率の上昇と関連している可能性がある。逆に、植物由来のタンパク質や脂肪では、死亡率が低下する可能性がある。2021年に日本で行われた研究では、低炭水化物食の長期的な側面が検討された。この研究には90,171人が参加し、中央値で17年間の追跡調査が行われた。その結果、低炭水化物食の遵守率が高いほど、がんリスク全体が上昇することがわかった。食事の構成を見てみると、動物性食品を多く食べることはがんリスクの上昇と関連していたが、植物性脂肪の摂取は関連していなかった。 | |||
2018年時点では、糖質制限食の潜在的な[[adverse effect/ja|悪影響]]、特に[[micronutrient/ja|微量栄養素]]の充足、[[bone health/ja|骨の健康]]、[[cancer/ja|がん]]リスクについては十分な注意が払われていない。ある質の低いメタアナリシスでは、副作用として「[[constipation/ja|便秘]]、[[headache/ja|頭痛]]、[[halitosis/ja|口臭]]、[[muscle cramps/ja|筋肉のけいれん]]、全身の脱力感」などが考えられると報告している。 | |||
Churuangsuk氏らは、2018年の包括的な[[systematic review/ja|システマティックレビュー]]において、他の[[case report/ja|症例報告]]からも、[[hyperosmolar coma/ja|高浸透圧性昏睡]]、[[Wernicke's encephalopathy/ja|ウェルニッケ脳症]]、[[thiamine deficiency/ja|チアミン欠乏症]]による[[optic neuropathy/ja|視神経障害]]、[[acute coronary syndrome/ja|急性冠症候群]]、[[anxiety disorder/ja|不安障害]]など、低炭水化物ダイエットの他の潜在的なリスクが懸念されると報告している。 | |||
食事に占める炭水化物の割合を大幅に制限すると、[[malnutrition/ja|栄養失調]]を引き起こす危険性があり、健康を維持するのに十分な[[dietary fiber/ja|食物繊維]]を摂取することが難しくなる。 | |||
2014年現在、心血管疾患患者の死亡リスクに関しては、摂取する炭水化物の種類が重要であり、食物繊維と全粒穀物を比較的多く含む食事は、精製穀物を多く含む食事に比べて心血管疾患による死亡リスクを低下させるようである。 | |||
== 歴史 == | |||
{{Anchor|History}} | |||
[[File:Breadindia.jpg|thumb|alt=茶色と全粒粉のパン。|低炭水化物ダイエットでは、パンなどの炭水化物を多く含む食品の量を制限する。]] | |||
[[File:Breadindia.jpg|thumb|alt= | |||
=== 最初の記述=== | |||
1797年、[[:en:John Rollo|ジョン・ロロ]]は2人の[[diabetic/ja|糖尿病患者]]の陸軍将校を低糖質食と薬物療法で治療した結果を報告した。低炭水化物食と医薬品による陸軍将校の治療結果を報告した。超低炭水化物食は19世紀を通じて糖尿病の標準的な治療法であった。 | |||
1863年、かつて肥満であったイギリスの葬儀屋で棺桶職人であった[[:en:William Banting|ウィリアム・バンティング]]は、[[bread/ja|パン]]、[[butter/ja|バター]]、[[milk/ja|牛乳]]、[[sugar/ja|砂糖]]、[[beer/ja|ビール]]、[[potatoes/ja|ジャガイモ]]を断つ体重コントロールのための食事療法を記した『大衆に宛てた肥満についての手紙』を出版した。彼の小冊子は広く読まれ、現在「[[dieting/ja|ダイエット]]」と呼ばれる行為に対して「バンティング」という言葉を使う人もいるほどだった。 | |||
1800年代後半に糖尿病を治療するために大量の動物性脂肪とタンパク質からなる低炭水化物食を提唱した医師には、[[:en:James Lomax Bardsley|ジェイムズ・ローマックス・バーズリー]]、[[:en:Apollinaire Bouchardat|アポリネール・ブシャルダ]]、[[:en:Frederick William Pavy|フレデリック・ウィリアム・パヴィ]]などがいる。[[:en:Arnaldo Cantani|アルナルド・カンターニ]]は糖尿病患者を密室に隔離し、動物性の食事だけを処方した。 | |||
1900年代初頭に[[:en:Frederick Madison Allen|フレデリック・マディソン・アレン]]は、1916年の[[:en:The Connecticut State Medical Society|コネチカット州医師会]]の年次大会でウォルター・R・スタイナーによって''糖尿病の飢餓療法''として説明された非常に制限的な短期療法を開発した。この食事療法は、コンプライアンスと安全性をより確実にするために、しばしば病院で実施された。 | |||
=== 現代の低炭水化物ダイエット=== | |||
=== | {{Further/ja|Atkins diet/ja}} | ||
{{Further|Atkins diet}} | 1960年代の他の低炭水化物ダイエットには、空軍ダイエット、[[Drinking Man's Diet/ja|酒飲みダイエット]]などがあった。1972年、[[:en:Robert Atkins (nutritionist)|ロバート・アトキンス]]は''[[Atkins Diet/ja|Dr. Atkins' Diet Revolution]]''を出版し、1960年代に彼が治療に成功した低炭水化物ダイエットを提唱した。同書は出版としては成功を収めたが、主流派の医学界からは危険で誤解を招くとして広く批判され、当時の訴求力は限定的なものとなった。 | ||
[[glycemic index/ja|グリセミック指数]]の概念は、異なるタイプの炭水化物の消化速度の違いを考慮するために、1981年にデヴィット・ジェンキンスによって開発された。この概念は、[[blood sugar/ja|血糖値]]レベルに及ぼす影響の速さ{{spaced ndash}}によって食品を分類するもので、消化の速い[[simple carbohydrate/ja|単純炭水化物]]はより急激な上昇を引き起こし、[[whole grain/ja|全粒穀物]]などの消化の遅い[[complex carbohydrate/ja|複合炭水化物]]はより緩慢な上昇を引き起こす。ジェンキンスの研究は、その後の低炭水化物ダイエットの科学的基礎を築いた。 | |||
1992年、アトキンスは1972年に出版した『''Dr. Atkins' New Diet Revolution''を改訂し、他の医師たちも同じ原則に基づいた本を出版し始めた。1990年代後半から2000年代前半にかけて、低炭水化物ダイエットはアメリカで最も人気のあるダイエット法のひとつとなった。一部の証言によると、低炭水化物ダイエットの人気のピーク時には、人口の最大18%がいずれかのタイプの低炭水化物ダイエットを使用していた。[[Food processing/ja|食品メーカー]]や[[:en:restaurant chain|レストランチェーン]]は、彼らのビジネスに影響を与えるとして、この傾向に注目した。2001年には[[:en:American Heart Association|AHA]]が、2002年には[[:en:American Kidney Fund|アメリカ腎臓基金]]が、低炭水化物ダイエットは健康に危険であると非難した。 | |||
==== ケトン食==== | |||
= | {{For/ja|てんかん治療|Ketogenic diet/ja}} | ||
{{For| | オリジナルの[[ketogenic diet/ja|ケトジェニック食]]は1920年代に開発された高脂肪・低炭水化物食で、[[Drug-resistant epilepsy/ja|薬物抵抗性]]の小児[[epilepsy/ja|てんかん]]の治療に用いられる。 ほとんどのてんかん専門医は、これらの小児に対して、食事の80重量%(カロリーの90%)を脂肪から摂り、さらに[[vitamin deficiency/ja|ビタミン欠乏症]]を防ぐために炭水化物を含まない[[Multivitamin/ja|ビタミン]]とミネラルを摂るように指示する。 この極端な食事療法は、他の方法に比べれば救命効果があるが、無害な食事療法ではない。 この食事を摂っている子どもは、[[Osteoporosis/ja|骨折]]、[[stunted growth/ja|発育不全]]、[[kidney stones/ja|腎臓結石]]、[[high cholesterol/ja|高コレステロール]]、[[micronutrient deficiency/ja|微量栄養素欠乏症]]のリスクがある。 | ||
同じ名前を採用した[[fad diet/ja|流行ダイエット]]も高脂肪、低炭水化物ダイエットであるが、脂肪含量は低い。 この'''ケト・ダイエット'''の典型的なバージョンは、成人の場合、食べ物の重量の約50%が脂肪(カロリーの70%)である。 推進派は、体重減少を誘発すると主張している。 減量ケトジェニックダイエットの前提は、体が炭水化物食品から得られる[[glucose/ja|グルコース]]を奪われた場合、蓄積脂肪からエネルギーを生成することである。ケト食には、以下のようないくつかの異なるアプローチがある: | |||
* ''ケトジェニック・ダイエット''(KD)-通常、炭水化物の摂取量は1日あたり50g未満である(総摂取カロリーを2,000 カロリーとして)。 | |||
* '' | * ''超低カロリーケトジェニック食''(VLCKD)-KDと同じだが、総カロリーを1日最大800 カロリーに制限する。 | ||
* '' | * ''ケトジェニック低炭水化物高脂肪食''(K-LCHF)-KDと同じだが、カロリーの60~80%を脂肪から摂取するという制限が加わる。 | ||
* '' | * ''修正アトキンスダイエット''(MAD):K-LCHFより炭水化物を減らし(1日10グラム以下)、高脂肪食品を奨励するが、必要量は特に定めない。 | ||
* '' | |||
2020年のレビューでは、高脂肪・低タンパク質の''超低炭水化物ケトジェニックダイエット''が検討された。その結果、過体重または肥満の人の減量には有効な手段であり、4週間で平均10 kgの体重減少をもたらし、最大2年間体重減少が維持されることがわかった。しかし、[[serum sodium/ja|血清ナトリウム]]濃度に関する懸念から、著者らは、この食事療法は「選ばれた」人々にのみ使用し、厳格な[[medical supervision/ja|医学的管理]]の下で使用することを提案した。 | |||
2021年、[[:en:American Heart Association|アメリカ心臓協会]]は[[Cardiac diet/ja|心血管系の健康を改善するための食事指導]]に関する科学的声明を発表し、「心臓の健康を促進するために、ケトジェニックダイエットや断続的断食など、既存の一般的なダイエット法や流行のダイエット法を支持する証拠は不十分である」と指摘した。 | |||
== こちらも参照 == | |||
{{Wikivoyage|Travelling on a low-carbohydrate diet}} | {{Wikivoyage|Travelling on a low-carbohydrate diet}} | ||
{{div col}} | {{div col}} | ||
* [[ | * [[Atkins diet/ja]] | ||
* [[Gluconeogenesis]] | * [[Gluconeogenesis/ja]] | ||
* [[Insulin resistance]] | * [[Insulin resistance/ja]] | ||
* [[KE diet]] | * [[KE diet/ja]] | ||
* [[Low-fiber/low-residue diet]] | * [[Low-fiber/low-residue diet/ja]] | ||
* [[Protein-sparing modified fast]] | * [[Protein-sparing modified fast/ja]] | ||
* [[Richard K. Bernstein]] | * [[:en:Richard K. Bernstein]] | ||
{{div col end}} | {{div col end}} | ||
== さらに読む == | |||
{{refbegin}} | {{refbegin}} | ||
* {{cite book | vauthors = Lowery R, Wilson J | title = The Ketogenic Bible: The Authoritative Guide to Ketosis | edition = 1st | publisher = Victory Belt Publishing | date = 2017 | isbn = 978-1-62860-104-6 }} | * {{cite book | vauthors = Lowery R, Wilson J | title = The Ketogenic Bible: The Authoritative Guide to Ketosis | edition = 1st | publisher = Victory Belt Publishing | date = 2017 | isbn = 978-1-62860-104-6 }} | ||
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Latest revision as of 15:47, 8 March 2024

低炭水化物ダイエットでは、平均的なダイエットと比較して炭水化物の消費を制限する。炭水化物を多く含む食品(例えば、砂糖、パン、パスタ)を制限し、脂肪とタンパク質の割合が高い食品(例えば、 肉、鶏肉、魚、貝類、卵、チーズ、ナッツ、種子)や低炭水化物食品(例. 例えばほうれん草、ケール、チャード、コラード、その他の繊維質の野菜)。
低炭水化物食の炭水化物摂取量については標準化がなされていないため、研究が複雑になっている。アメリカ家庭医学会の定義のひとつでは、低炭水化物食とは、炭水化物からのカロリーが20%未満であることとしている。
低炭水化物ダイエットが体重減少を除けば、特定の健康上の利益をもたらすという良い証拠はない。体重減少は主にカロリー制限とその遵守によって決まるため、低炭水化物ダイエットは他のダイエットと同様の結果をもたらす。
低炭水化物食の1つであるケトジェニックダイエットは、てんかんを治療するための医薬品として最初に確立された。それは有名人の推薦によって減量のための人気のある食事療法となったが、この目的のための際立った利点の証拠はなく、この食事療法は副作用のリスクを伴い、英国栄養士会は2018年に「避けるべき最悪のセレブダイエットトップ5」の1つに挙げた。
定義と分類
大栄養素の比率
低炭水化物ダイエットの大栄養素比率は標準化されていない。2018年じてん、"低炭水化物ダイエット"の定義に矛盾があるため、研究が複雑になっている。
全米脂質学会は、低炭水化物食を、炭水化物からのカロリーが25%以下のものと定義している。栄養・ライフスタイルタスクフォースは、低炭水化物食を炭水化物からのカロリーが25%以下のものと定義し、超低炭水化物食を炭水化物の含有量が10%以下のものと定義している。低炭水化物食に関する2016年のレビューでは、1日あたりの炭水化物量が50 g(総カロリーの10%未満)の食事を「超低」低炭水化物食、炭水化物からのカロリーが40%の食事を「軽度」低炭水化物食と分類している。英国国民保健サービスは、"炭水化物は、健康的でバランスの取れた食事における身体の主なエネルギー源であるべきである"と勧告している。
食材

食事に含まれる炭水化物の量よりもむしろ質が健康にとって重要であり、高繊維質のゆっくり消化する炭水化物が豊富な食品は健康によく、高度に精製された甘い食品はそうではないという証拠がある。健康状態のために食事療法を選択する人は、個々の要求に合わせて食事療法を行うべきである。
ほとんどの野菜は低炭水化物または中程度の炭水化物食品である(一部の低炭水化物ダイエットでは、ファイバーは栄養価の高い炭水化物ではないため除外される)。ジャガイモ、ニンジン、トウモロコシ、米などの一部の野菜はデンプンを多く含む。ほとんどの低炭水化物ダイエットプランでは、ブロッコリー、ほうれん草、ケール、レタス、キュウリ、カリフラワー、芽キャベツ、ピーマンなどの野菜や、ほとんどの緑の葉野菜に対応している。
権威者の意見
米国医学アカデミーは、1日平均130 gの炭水化物を推奨している。また、FAOとWHOも同様に、食事エネルギーの大部分を炭水化物から摂取することを推奨している。2015-2020年版のアメリカ人のための食生活指針では、低炭水化物食は推奨されておらず、代わりに低脂肪食が推奨されている。
炭水化物は大栄養素特有の"太りやすい"栄養素であると誤って非難され、多くのダイエッターが炭水化物を多く含む食品を排除することで、食事の栄養価を損なうように誤解されている。低炭水化物ダイエットの支持者は、低炭水化物ダイエットは、最初はバランスの取れた食事よりもわずかに大きな体重減少を引き起こすことができるという研究を強調するが、そのような利点は持続しない。長期的な体重維持の成功は、摂取カロリーによって決まるのであって、多量栄養素の比率によって決まるのではない。
ゾーンダイエットやサウスビーチダイエットなどの一部のダイエット法が "低炭水化物"として宣伝されていることに、世間は混乱している。
炭水化物-インスリン仮説
ゲイリー・タウベスやデイヴィッド・ルートヴィヒを含む低炭水化物ダイエットの提唱者たちは、炭水化物はインスリンレベルを上昇させ、脂肪を過度に蓄積させるため、特異的に太りやすいとする「炭水化物-インスリン仮説」を提唱している。この仮説は、インスリンの作用と脂肪の蓄積、肥満との間にそのような関連があるという十分な証拠がないという、既知のヒト生物学に反しているように見える。この仮説は、低炭水化物ダイエットは、アトキンスダイエットの約束である「永遠にやせ続けるための高カロリーの方法」と一致し、400〜600kcal(キロカロリー)/日のエネルギー消費量の増加という「代謝上の利点」を提供すると予測した。
2012年、タウベスはローラ&ジョン・アーノルド財団からの資金提供を受け、「栄養科学イニシアチブ(NuSI)」を共同で設立した。「栄養学のためのマンハッタン計画」を実施し、仮説を検証するために2億ドル以上を集めることを目的としていた。中間結果はAmerican Journal of Clinical Nutritionに発表されたが、低炭水化物食が他の組成の食事と比較して有利であるという説得力のある証拠は得られなかった。この研究では、ケトジェニック食が呼吸室で測定した24時間のエネルギー消費量を増加させるという、わずかな(~100kcal/日)ながらも統計学的に有意な効果を示したが、その効果は時間の経過とともに衰えていった。結局のところ、超低カロリーのケトジェニック食(炭水化物5%)は、同じカロリーの非特異的な食事と比較して「脂肪量の有意な減少とは関連しなかった」のであり、有用な「代謝上の利点」はなかったのである。2017年、このプロジェクトを支援するために雇われた米国立衛生研究所の研究者ケビン・ホールは、炭水化物-インスリン仮説は|実験によって捏造されたと書いた。ホールは、"肥満の増加は主に精製された炭水化物の消費の増加によるものかもしれないが、そのメカニズムは炭水化物-インスリンモデルが提唱するものとは全く異なる可能性が高い"と書いた。
健康の側面
アドヒアランス
長期的には、同じ熱量の食事療法でも、食事療法プログラムをどれだけ忠実に守れるかという差別化要因を除けば、減量効果は同じであることが繰り返し判明している。低脂肪食、低炭水化物食、地中海食を摂取しているグループを比較した研究では、6ヶ月の時点ではまだ低炭水化物食を守っている人が多かったが、その後状況は逆転した。2年後、低炭水化物群では、脱落や脱落の発生率が最も高かった。これは、低炭水化物ダイエットの食物の選択肢が比較的限られているためかもしれない。
体重
短期および中期的には、低炭水化物食を摂っている人のほうが低脂肪食を摂っている人よりも体重が減少する。内分泌学会は、「摂取カロリーを一定に保った場合、......体脂肪蓄積は、食事中の脂肪対炭水化物の量が非常に顕著に変化しても影響を受けないようである」と述べている。このような食事をしている人は、当初は約100kcal/日に相当するごくわずかな体重減少が見られるが、その優位性は時間の経過とともに減少し、最終的には取るに足らないものとなる。2022年に発表されたコクラン・レビューでは、2年間という長期間に渡って調査され、低炭水化物ダイエットを続けることに、バランスの取れたダイエットと比較して、何のメリットもないことが判明している。
低脂肪ダイエットと低炭水化物ダイエットを比較する研究の多くは質が低く、大きな効果を報告した研究は、方法論的に健全な研究に比べて不釣り合いな注目を集めてきた。2018年のレビューでは、"より質の高いメタアナリシスでは、2つのダイエット法の間で体重減少の差はほとんどないか、全くないと報告されている "と述べている。質の低いメタアナリシスは、低炭水化物ダイエットの効果について好意的に報告する傾向がある:システマティックレビューは、10件のメタアナリシスのうち8件が、体重減少の結果が公表バイアスの影響を受けた可能性があるかどうかを評価し、そのうち7件が肯定的な結論を出したと報告している。2017年のレビューでは、低炭水化物ダイエットを含む様々なダイエット法が同様の体重減少結果を達成しており、それは主にダイエットの種類よりもカロリー制限とアドヒアランスによって決定されると結論付けている。
心血管系の健康
低炭水化物食を2年未満続けても、心血管系の健康マーカーは悪化しないことがわかった。しかし、低炭水化物食を長年続けると、心臓病で死亡する可能性がある。低炭水化物食を長期に続けると、総コレステロールやLDLコレステロールの増加といった脂質パラメータに悪影響を及ぼす。これは、低炭水化物ダイエットを行う人の多くが動物性食品を多く食べ、繊維や微量栄養素を豊富に含む果物や野菜をあまり食べないためである。
米国心臓病学会は、超低炭水化物食を希望する人に対して、臨床医と患者との話し合いを推奨している。超低炭水化物食は、長期的にはLDL-C値と心血管系の健康を悪化させる可能性があることを説明すべきである。動脈硬化のある人は低炭水化物食を避けるように助言すべきである。
糖尿病
1型糖尿病の患者に対する低炭水化物食の有効性に関する証拠は限られている。特定の個人にとっては、低炭水化物療法と注意深く管理されたインスリン投与を組み合わせることは実行可能かもしれない。しかし、これを維持するのは困難であり、食事療法による健康への悪影響が懸念される。一般に、1型糖尿病患者には、個々に合わせた食事計画に従うことが勧められる。
食事中の炭水化物の割合は2型糖尿病のリスクとは関連していないが、特定の高炭水化物食品(砂糖入り飲料や白米など)を含む食事がリスクの増加と関連しているという証拠がいくつかある。炭水化物食品の摂取を減らすことで、2型糖尿病のバイオマーカーが減少する可能性を示す証拠もある。
2019年の米国糖尿病学会(ADA)の糖尿病および糖尿病予備群の成人に対する栄養療法に関するコンセンサスレポートでは、"糖尿病患者の全体的な炭水化物摂取量を減らすことは、血糖値(血糖値)を改善するための最も多くのエビデンスを示しており、個人のニーズや嗜好に合ったさまざまな食事パターンに適用することができる"と述べられている。しかし、別の情報源によれば、低炭水化物食が、一般的に消費カロリーの40%以上を炭水化物が占める従来の健康的な食事よりも優れているという良い証拠はないとしている。低炭水化物食は、2型糖尿病患者の腎機能に影響を与えない。
炭水化物の摂取を制限すると、長期的な体重減少はないものの、一般に血糖コントロールが改善する。低炭水化物食は2型糖尿病患者の減量に有用であるが、「一貫して優れていると証明されたアプローチはない」。ADAによれば、糖尿病患者は "個々の大栄養素や微量栄養素、あるいは単一の食品に注目するのではなく、健康的な食事パターンを身につける "べきである。食事中の炭水化物は、「野菜、豆類、果物、乳製品(牛乳とヨーグルト)、全粒穀物」から摂取し、高度に精製された食品や糖分の多い飲み物は避けるべきだと推奨している。ADAはまた、"糖尿病患者の全体的な炭水化物摂取量を減らすことは、血糖値を改善するための最も多くのエビデンスを示しており、個人のニーズや嗜好に合った様々な食事パターンに適用することができる"と書いている。血糖目標値を達成できない2型糖尿病患者や、抗血糖医薬品を減らすことが優先される場合、ADAは低炭水化物食または超低炭水化物食が実行可能なアプローチであるとしている。
2021年の包括的レビューによると、糖尿病患者において、低炭水化物食は高炭水化物食や低脂肪食よりも体重減少に効果がないことがわかった。
運動と疲労
低炭水化物食は、激しい運動努力に対する持久力能力を低下させることが判明しており、そのような努力後に枯渇した筋肉グリコーゲンは、低炭水化物食を摂取してもゆっくりとしか補充されない。運動トレーニング中の不十分な炭水化物摂取は代謝性アシドーシスを引き起こし、これが観察されたパフォーマンスの低下の原因である可能性がある。
安全性
低炭水化物食は、ケトーシスと呼ばれる状態で、脳、心臓、腎臓などの重要な臓器にエネルギーを供給するケトン体を肝臓で作るために使われる脂肪酸の代謝を広範囲に引き起こす。ケトーシスには、アルコール中毒や糖尿病など他の原因があることもある。ケトン体の過剰な蓄積は、ケトン体の産生が消費よりも多い場合に起こり、生命を脅かす可能性のある状態であるケトアシドーシスに至る。まれに、低炭水化物ケトジェニック食も、特に合併症を有する患者ではケトアシドーシスを引き起こすことがある。アトキンスやサウスビーチダイエットなどの低炭水化物ダイエットを行っている人にケトアシドーシスが発生したという症例報告がまれにある。このため、ケトアシドーシスは低炭水化物ダイエットの潜在的危険因子であると考えるべきであると指摘されている。
動物由来のタンパク質や脂肪を多く含む高炭水化物食や低炭水化物食は、死亡率の上昇と関連している可能性がある。逆に、植物由来のタンパク質や脂肪では、死亡率が低下する可能性がある。2021年に日本で行われた研究では、低炭水化物食の長期的な側面が検討された。この研究には90,171人が参加し、中央値で17年間の追跡調査が行われた。その結果、低炭水化物食の遵守率が高いほど、がんリスク全体が上昇することがわかった。食事の構成を見てみると、動物性食品を多く食べることはがんリスクの上昇と関連していたが、植物性脂肪の摂取は関連していなかった。
2018年時点では、糖質制限食の潜在的な悪影響、特に微量栄養素の充足、骨の健康、がんリスクについては十分な注意が払われていない。ある質の低いメタアナリシスでは、副作用として「便秘、頭痛、口臭、筋肉のけいれん、全身の脱力感」などが考えられると報告している。
Churuangsuk氏らは、2018年の包括的なシステマティックレビューにおいて、他の症例報告からも、高浸透圧性昏睡、ウェルニッケ脳症、チアミン欠乏症による視神経障害、急性冠症候群、不安障害など、低炭水化物ダイエットの他の潜在的なリスクが懸念されると報告している。
食事に占める炭水化物の割合を大幅に制限すると、栄養失調を引き起こす危険性があり、健康を維持するのに十分な食物繊維を摂取することが難しくなる。
2014年現在、心血管疾患患者の死亡リスクに関しては、摂取する炭水化物の種類が重要であり、食物繊維と全粒穀物を比較的多く含む食事は、精製穀物を多く含む食事に比べて心血管疾患による死亡リスクを低下させるようである。
歴史

最初の記述
1797年、ジョン・ロロは2人の糖尿病患者の陸軍将校を低糖質食と薬物療法で治療した結果を報告した。低炭水化物食と医薬品による陸軍将校の治療結果を報告した。超低炭水化物食は19世紀を通じて糖尿病の標準的な治療法であった。
1863年、かつて肥満であったイギリスの葬儀屋で棺桶職人であったウィリアム・バンティングは、パン、バター、牛乳、砂糖、ビール、ジャガイモを断つ体重コントロールのための食事療法を記した『大衆に宛てた肥満についての手紙』を出版した。彼の小冊子は広く読まれ、現在「ダイエット」と呼ばれる行為に対して「バンティング」という言葉を使う人もいるほどだった。
1800年代後半に糖尿病を治療するために大量の動物性脂肪とタンパク質からなる低炭水化物食を提唱した医師には、ジェイムズ・ローマックス・バーズリー、アポリネール・ブシャルダ、フレデリック・ウィリアム・パヴィなどがいる。アルナルド・カンターニは糖尿病患者を密室に隔離し、動物性の食事だけを処方した。
1900年代初頭にフレデリック・マディソン・アレンは、1916年のコネチカット州医師会の年次大会でウォルター・R・スタイナーによって糖尿病の飢餓療法として説明された非常に制限的な短期療法を開発した。この食事療法は、コンプライアンスと安全性をより確実にするために、しばしば病院で実施された。
現代の低炭水化物ダイエット
1960年代の他の低炭水化物ダイエットには、空軍ダイエット、酒飲みダイエットなどがあった。1972年、ロバート・アトキンスはDr. Atkins' Diet Revolutionを出版し、1960年代に彼が治療に成功した低炭水化物ダイエットを提唱した。同書は出版としては成功を収めたが、主流派の医学界からは危険で誤解を招くとして広く批判され、当時の訴求力は限定的なものとなった。
グリセミック指数の概念は、異なるタイプの炭水化物の消化速度の違いを考慮するために、1981年にデヴィット・ジェンキンスによって開発された。この概念は、血糖値レベルに及ぼす影響の速さ – によって食品を分類するもので、消化の速い単純炭水化物はより急激な上昇を引き起こし、全粒穀物などの消化の遅い複合炭水化物はより緩慢な上昇を引き起こす。ジェンキンスの研究は、その後の低炭水化物ダイエットの科学的基礎を築いた。
1992年、アトキンスは1972年に出版した『Dr. Atkins' New Diet Revolutionを改訂し、他の医師たちも同じ原則に基づいた本を出版し始めた。1990年代後半から2000年代前半にかけて、低炭水化物ダイエットはアメリカで最も人気のあるダイエット法のひとつとなった。一部の証言によると、低炭水化物ダイエットの人気のピーク時には、人口の最大18%がいずれかのタイプの低炭水化物ダイエットを使用していた。食品メーカーやレストランチェーンは、彼らのビジネスに影響を与えるとして、この傾向に注目した。2001年にはAHAが、2002年にはアメリカ腎臓基金が、低炭水化物ダイエットは健康に危険であると非難した。
ケトン食
オリジナルのケトジェニック食は1920年代に開発された高脂肪・低炭水化物食で、薬物抵抗性の小児てんかんの治療に用いられる。 ほとんどのてんかん専門医は、これらの小児に対して、食事の80重量%(カロリーの90%)を脂肪から摂り、さらにビタミン欠乏症を防ぐために炭水化物を含まないビタミンとミネラルを摂るように指示する。 この極端な食事療法は、他の方法に比べれば救命効果があるが、無害な食事療法ではない。 この食事を摂っている子どもは、骨折、発育不全、腎臓結石、高コレステロール、微量栄養素欠乏症のリスクがある。
同じ名前を採用した流行ダイエットも高脂肪、低炭水化物ダイエットであるが、脂肪含量は低い。 このケト・ダイエットの典型的なバージョンは、成人の場合、食べ物の重量の約50%が脂肪(カロリーの70%)である。 推進派は、体重減少を誘発すると主張している。 減量ケトジェニックダイエットの前提は、体が炭水化物食品から得られるグルコースを奪われた場合、蓄積脂肪からエネルギーを生成することである。ケト食には、以下のようないくつかの異なるアプローチがある:
- ケトジェニック・ダイエット(KD)-通常、炭水化物の摂取量は1日あたり50g未満である(総摂取カロリーを2,000 カロリーとして)。
- 超低カロリーケトジェニック食(VLCKD)-KDと同じだが、総カロリーを1日最大800 カロリーに制限する。
- ケトジェニック低炭水化物高脂肪食(K-LCHF)-KDと同じだが、カロリーの60~80%を脂肪から摂取するという制限が加わる。
- 修正アトキンスダイエット(MAD):K-LCHFより炭水化物を減らし(1日10グラム以下)、高脂肪食品を奨励するが、必要量は特に定めない。
2020年のレビューでは、高脂肪・低タンパク質の超低炭水化物ケトジェニックダイエットが検討された。その結果、過体重または肥満の人の減量には有効な手段であり、4週間で平均10 kgの体重減少をもたらし、最大2年間体重減少が維持されることがわかった。しかし、血清ナトリウム濃度に関する懸念から、著者らは、この食事療法は「選ばれた」人々にのみ使用し、厳格な医学的管理の下で使用することを提案した。
2021年、アメリカ心臓協会は心血管系の健康を改善するための食事指導に関する科学的声明を発表し、「心臓の健康を促進するために、ケトジェニックダイエットや断続的断食など、既存の一般的なダイエット法や流行のダイエット法を支持する証拠は不十分である」と指摘した。
こちらも参照

さらに読む
- Lowery R, Wilson J (2017). The Ketogenic Bible: The Authoritative Guide to Ketosis (1st ed.). Victory Belt Publishing. ISBN 978-1-62860-104-6.