Translations:Discovery and development of dipeptidyl peptidase-4 inhibitors/59/ja

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アログリプチン

図.9:開発されたキナゾリノンベースの構造。キナゾリノン構造とアログリプチン

アログリプチン図9)は、武田薬品工業によって開発された新規のDPP-4阻害薬である。研究者らは、キナゾリノンベースの構造(図9)がDPP-4複合体上の活性部位と相互作用するのに必要な基を持つだろうという仮説を立てた。キナゾリノンベースの化合物はDPP-4複合体と効果的に相互作用するが、代謝半減期の低さに悩まされていた。そこで、キナゾリノンをピリミジンジオンで置き換えると、代謝安定性が向上し、選択的で生物学的利用能の高いDPP-4阻害薬が得られることが判明し、アログリプチンと命名された。このキナゾリン系化合物は、関連プロテアーゼであるDPP-8に対して強力な阻害作用と優れた選択性を示した。しかし、A環フェニル基の酸化により代謝半減期が短いという問題があった。研究者たちはまず、フッ素化誘導体の合成を試みた。この誘導体は代謝安定性が改善され、DPP-4酵素に対する優れた阻害作用を示した。しかし、この誘導体はCYP 450を阻害することもわかった。3A4を阻害し、hERGチャネルをブロックすることがわかった。この問題の解決策として、キナゾリノンを他の複素環に置き換えることが考えられたが、DPP-4阻害作用を失うことなくキナゾリノンを置き換えることができた。アログリプチンは、キナゾリノンをピリミジンジオンに置き換えることで発見された。アログリプチンはDPP-4に対して優れた阻害作用を示し、近縁のセリンプロテアーゼDPP-8DPP-9に対して10.000倍以上の並外れた選択性を示した。また、CYP 450酵素を阻害せず、30μMまでの濃度ではhERGチャネルをブロックしない。このデータに基づいて、アログリプチンが前臨床評価に選ばれた。2007年1月、アログリプチンは第III相臨床試験が進行中であり、2008年10月には米国食品医薬品局の審査を受けていた。