Fat/ja: Difference between revisions

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Fat/ja
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油(オリーブ、大豆、キャノーラなど)、水、[[monoglyceride/ja|モノグリセリド]]、脂肪酸を混ぜて、トランス脂肪酸や飽和脂肪酸と同じ働きをする「食用油脂」を作ることができる。
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===オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸===
===Omega-three and omega-six fatty acids===
{{main/ja|Omega-3 fatty acid/ja|Omega-6 fatty acid/ja}}
{{main|Omega-3 fatty acid|Omega-6 fatty acid}}
[[Omega-3 fatty acid/ja|ω-3脂肪酸]]はかなり注目されている。ω-3脂肪酸のうち、長鎖型も短鎖型も乳癌リスクとは一貫して関連していなかった。しかしながら、赤血球([[red blood cell/ja|赤血球]])膜に最も豊富に存在するオメガ-3系[[polyunsaturated fatty acid/ja|多価不飽和脂肪酸]]である[[docosahexaenoic acid/ja|ドコサヘキサエン酸]](DHA)の高レベルは、乳がんリスクの低下と関連していた。多価不飽和脂肪酸の摂取によって得られるDHAは、認知能力や行動能力と正の相関がある。さらに、DHAはヒトの脳の[[grey matter/ja|灰白質]]構造、網膜刺激、[[neurotransmission/ja|神経伝達]]に不可欠である。
The [[Omega-3 fatty acid|ω−3 fatty acids]] have received substantial attention. Among omega-3 fatty acids, neither long-chain nor short-chain forms were consistently associated with breast cancer risk. High levels of [[docosahexaenoic acid]] (DHA), however, the most abundant omega-3 [[polyunsaturated fatty acid]] in erythrocyte ([[red blood cell]]) membranes, were associated with a reduced risk of breast cancer. The DHA obtained through the consumption of polyunsaturated fatty acids is positively associated with cognitive and behavioral performance. In addition, DHA is vital for the [[grey matter]] structure of the human brain, as well as retinal stimulation and [[neurotransmission]].
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===エステル交換===
===エステル交換===

Latest revision as of 09:17, 26 February 2024

不飽和トリグリセリドの空間充填モデル
脂肪の主な種類である典型的なトリグリセリドの分子の理想化された表現。
様々な食品に含まれる脂肪の構成(総脂肪に占める割合

栄養学生物学化学において、脂肪とは通常、脂肪酸エステル、またはそのような化合物の混合物を意味し、最も一般的には生物または食物に存在するものを指す。

この用語は、特に植物油や動物の脂肪組織の主成分であるトリグリセリドグリセロールのトリプルエステル)を指すことが多く、より狭義には、室温で固体または半固体のトリグリセリドを指す。また、この用語は、脂質-炭素水素、または酸素から構成され、水に溶けないが非極性溶媒に溶ける生物学的に重要な物質-の同義語としてより広く使用されることもある。この意味では、トリグリセリドの他に、モノジグリセリドリン脂質レシチンなど)、ステロールコレステロールなど)、ワックス蜜蝋など)、遊離脂肪酸など、ヒトの食事に少量しか含まれない化合物も含まれる。

脂肪は、炭水化物タンパク質と並んで、ヒトの食事における三大大栄養素の一つであり、牛乳バター獣脂ラード塩豚食用油などの一般的な食品の主成分である。脂肪は多くの動物にとって食物エネルギーの主要かつ濃密な供給源であり、ほとんどの生物において、エネルギー貯蔵、防水、断熱などの重要な構造的・代謝的機能を担っている。人体は、食事に含まれなければならない少数の必須脂肪酸を除いて、他の食物成分から必要な脂肪を作り出すことができる。食用脂肪はまた、いくつかのフレーバー香り成分、および水溶性ではないビタミンのキャリアでもある。

生物学的重要性

ヒトおよび多くの動物において、脂肪はエネルギー源としての役割と、身体がすぐに必要とするエネルギー以上のエネルギーを貯蔵する役割の両方を果たす。脂肪1グラムが燃焼または代謝されると、約9食物カロリーを放出する(37kJ=8.8kcal)。

脂肪はまた、必須脂肪酸の供給源でもある。ビタミンADEKは脂溶性である。 つまり、脂肪と一緒に消化・吸収・運搬されるだけである。

脂肪は、健康な皮膚毛髪を維持し、身体の器官を衝撃から絶縁し、体温を維持し、健康な細胞機能を促進する上で重要な役割を果たしている。脂肪はまた、多くの病気に対する有用な緩衝材としても機能する。化学物質であれ生物学的物質であれ、特定の物質が血流中で危険なレベルに達すると、身体はそれを新しい脂肪組織に貯蔵することで、効果的に希釈するか、少なくとも問題のある物質の平衡を保つことができる。これは、排泄排尿、偶発的または意図的な採血皮脂の排泄、毛髪の成長などの手段によって、原因物質が代謝または体外に排出されるまで、重要な臓器を保護するのに役立つ。

脂肪組織

左の肥満マウスは脂肪組織を大量に蓄えている。比較のため、脂肪組織が正常なマウスを右側に示す。

動物では、脂肪組織、または脂肪組織は、長期間にわたって代謝エネルギーを貯蔵する体の手段である。脂肪細胞は食事や肝臓代謝から得た脂肪を貯蔵する。エネルギーストレス下では、これらの細胞は貯蔵された脂肪を分解し、脂肪酸とグリセロールを循環に供給する。これらの代謝活動はいくつかのホルモン(例えば、インスリングルカゴンエピネフリン)によって調節されている。脂肪組織はレプチンというホルモンも分泌する。

生産と加工

油脂の生産と加工には、工業的にも、家内や家庭でも、様々な化学的・物理的技術が用いられている。それらには以下が含まれる:

代謝

膵リパーゼはエステル結合に作用し、結合を加水分解して脂肪酸を「放出」する。トリグリセリドの形では、脂質は十二指腸で吸収されない。脂肪酸、モノグリセリド(1つのグリセロールと1つの脂肪酸)、および一部のジグリセリドは、トリグリセリドが分解されると十二指腸で吸収される。

では、リパーゼ胆汁の分泌に続いて、トリグリセリドは脂肪分解と呼ばれる過程でモノアシルグリセロールと遊離脂肪酸に分解される。それらはその後、腸を裏打ちする吸収性の腸細胞に移動する。トリグリセリドは腸管細胞内でその断片から再構築され、コレステロールやタンパク質とともにパッケージされてカイロミクロンを形成する。これらは細胞から排泄され、リンパ系に集められ、血液に混ざる前に心臓近くの大血管に運ばれる。様々な組織がカイロミクロンを捕捉し、トリグリセリドを放出してエネルギー源として利用することができる。肝細胞はトリグリセリドを合成し、貯蔵することができる。肝細胞はトリグリセリドを合成し貯蔵することができる。身体がエネルギー源として脂肪酸を必要とするとき、グルカゴンというホルモンがホルモン感受性リパーゼによるトリグリセリドの分解を促し、遊離脂肪酸を放出する。は(ケトン体に変換されない限り)脂肪酸をエネルギー源として利用することができないため、トリグリセリドのグリセロール成分は、分解されるとジヒドロキシアセトンリン酸に変換され、さらにグリセルアルデヒド3リン酸に変換されることで糖新生を経てグルコースに変換され、脳の燃料となる。脳の必要量が身体の必要量を上回ることがあれば、脂肪細胞もそのために分解されることがある。

トリグリセリドは細胞膜を自由に通過することができない。血管壁にあるリポ蛋白リパーゼと呼ばれる特殊な酵素が、トリグリセリドを遊離脂肪酸とグリセロールに分解しなければならない。脂肪酸はその後、脂肪酸輸送タンパク質(FATPs)を介して細胞に取り込まれる。

トリグリセリドは、超低比重リポタンパク質(VLDL)およびカイロミクロンの主要成分として、エネルギー源および食事脂肪の輸送体として代謝において重要な役割を果たしている。これらは炭水化物(約4 kcal/gまたは17 kJ/g)の2倍以上のエネルギー(約9 kcal/gまたは38 kJ/g)を含む。

栄養と健康の側面

脂肪の最も一般的なタイプは、ヒトの食事やほとんどの生物において、トリグリセリドであり、三重のアルコールグリセロールである。H(-CHOH-)
3
H
と3つの脂肪酸のエステルである。トリグリセリドの分子は、グリセロールの各-OH基と各脂肪酸のカルボキシル基HO(Od)CsのHO-部分との間の縮合反応(具体的にはエステル化)から生じ、エステル橋を形成していると説明することができる。水分子H
2
O
の除去とともにsOs(O)Csを形成する。

他のあまり一般的でないタイプの脂肪にはジグリセリドモノグリセリドがあり、エステル化がグリセロールの-OH基の2つまたは1つに限定されている。他のアルコール、例えばセチルアルコールスペルマセチでは優勢)はグリセロールに取って代わることがある。リン脂質では、脂肪酸の1つがリン酸またはそのモノエステルで置き換えられている。 様々な量と種類の食事脂肪の有益性と危険性は多くの研究の対象であり、現在でも非常に議論の多いテーマである。

必須脂肪酸

ヒトの栄養には2種類の必須脂肪酸(EFA)がある: α-リノレン酸オメガ3脂肪酸)とリノール酸オメガ6脂肪酸)である。成人の体は、この2つから必要な他の脂質を合成することができる。

食事からの摂取

Properties of vegetable oils
The nutritional values are expressed as percent (%) by mass of total fat.
Type Processing
treatment
Saturated
fatty acids
Monounsaturated
fatty acids
Polyunsaturated
fatty acids
Smoke point
Total Oleic
acid
(ω-9)
Total α-Linolenic
acid
(ω-3)
Linoleic
acid
(ω-6)
ω-6:3
ratio
Avocado 11.6 70.6 52–66
13.5 1 12.5 12.5:1 250 °C (482 °F)
Brazil nut 24.8 32.7 31.3 42.0 0.1 41.9 419:1 208 °C (406 °F)
Canola 7.4 63.3 61.8 28.1 9.1 18.6 2:1 204 °C (400 °F)
Coconut 82.5 6.3 6 1.7 175 °C (347 °F)
Corn 12.9 27.6 27.3 54.7 1 58 58:1 232 °C (450 °F)
Cottonseed 25.9 17.8 19 51.9 1 54 54:1 216 °C (420 °F)
Cottonseed hydrogenated 93.6 1.5 0.6 0.2 0.3 1.5:1
Flaxseed/linseed 9.0 18.4 18 67.8 53 13 0.2:1 107 °C (225 °F)
Grape seed   10.4 14.8 14.3   74.9 0.15 74.7 very high 216 °C (421 °F)
Hemp seed 7.0 9.0 9.0 82.0 22.0 54.0 2.5:1 166 °C (330 °F)
High-oleic safflower oil 7.5 75.2 75.2 12.8 0 12.8 very high 212 °C (414 °F)
Olive, Extra Virgin 13.8 73.0 71.3 10.5 0.7 9.8 14:1 193 °C (380 °F)
Palm 49.3 37.0 40 9.3 0.2 9.1 45.5:1 235 °C (455 °F)
Palm hydrogenated 88.2 5.7 0
Peanut 16.2 57.1 55.4 19.9 0.318 19.6 61.6:1 232 °C (450 °F)
Rice bran oil 25 38.4 38.4 36.6 2.2 34.4 15.6:1 232 °C (450 °F)
Sesame 14.2 39.7 39.3 41.7 0.3 41.3 138:1
Soybean 15.6 22.8 22.6 57.7 7 51 7.3:1 238 °C (460 °F)
Soybean partially hydrogenated 14.9 43.0 42.5 37.6 2.6 34.9 13.4:1
Sunflower 8.99 63.4 62.9 20.7 0.16 20.5 128:1 227 °C (440 °F)
Walnut oil unrefined 9.1 22.8 22.2 63.3 10.4 52.9 5:1 160 °C (320 °F)

飽和脂肪と不飽和脂肪の比較

食品によって、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の割合は異なり、含まれる脂肪の量も異なる。牛肉や、ヨーグルトアイスクリームチーズバターのような全脂肪乳や低脂肪乳を使った乳製品のような動物性食品は、そのほとんどが飽和脂肪酸である(食事性コレステロールを多く含むものもある)。豚肉鶏肉egg as food/ja卵、魚介類などの他の動物性食品はほとんどが不飽和脂肪酸である。工業化された焼き菓子は特に部分水素添加油を含む不飽和脂肪含量の高い油脂を使用することがあり、水素添加油揚げた加工食品は飽和脂肪含量が高い。

ココナッツオイルパーム核油などの例外もあるが、植物や魚油は一般に不飽和酸の割合が高い。不飽和脂肪を含む食品には、アボカドナッツオリーブ油キャノーラなどの植物油がある。

食事中の飽和脂肪をシス不飽和脂肪に置き換えることで、心血管系疾患(CVD)、糖尿病、または死亡のリスクが減少することが、多くの慎重な研究によって判明している。これらの研究により、世界保健機関(WHO)を含む多くの医薬品団体や公衆衛生局が公式にこのような勧告を出すようになった。このような勧告を出している国には次のようなものがある:

  • 英国
  • 米国
  • インド
  • カナダ
  • オーストラリア
  • シンガポール
  • ニュージーランド
  • 香港

2004年のレビューでは、「特定の飽和脂肪酸摂取量の安全下限値は特定されていない」と結論づけ、今後の研究では、個人のライフスタイルや遺伝的背景の違いを背景とした飽和脂肪酸摂取量の違いの影響を重視すべきであると勧告している。

このアドバイスは、2種類の脂肪をそれぞれ悪い脂肪良い脂肪とラベリングすることによって、しばしば単純化されすぎている。しかし、ほとんどの天然食品や伝統的な加工食品に含まれる油脂には、不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸の両方が含まれているため、飽和脂肪酸を完全に排除することは非現実的であり、賢明でない可能性もある。例えば、ココナッツオイルやパームオイルのような飽和脂肪を多く含む食品は、発展途上国の人口の大部分にとって、安価な食事カロリーの重要な供給源となっている。

また、2010年のアメリカ栄養士会の会議では、飽和脂肪酸を避けることを一律に推奨すると、健康上の利点があるかもしれない多価不飽和脂肪酸の量を減らしたり、肥満や心臓病のリスクが高い精製炭水化物に置き換えたりすることになるのではないかという懸念が表明された。

このような理由から、例えば米国食品医薬品局では、飽和脂肪からの摂取カロリーを少なくとも10%(高リスク群では7%)、全脂肪からの摂取カロリーを平均30%(以下)とすることを推奨している。2006年には米国心臓協会(AHA)も一般的に7%の制限を推奨している。

WHO/FAOの報告書はまた、特にミリスチン酸とパルミチン酸の含有量を減らすように脂肪を置き換えることを推奨している。

地中海地域の多くの国で普及している、いわゆる地中海食は、北欧諸国の食事よりも多くの総脂肪を含むが、そのほとんどはオリーブオイルや魚、野菜、ラム肉などの特定の肉から摂取される不飽和脂肪酸(具体的には一価不飽和脂肪酸とオメガ3)の形であり、飽和脂肪酸の消費はそれに比べて最小限である。 2017年のレビューでは、地中海食が心血管疾患、がん罹患率、神経変性疾患、糖尿病、死亡率のリスクを低下させるという証拠が見つかった。2018年のレビューでは、地中海風の食事は非伝染性疾患のリスク低減など、全体的な健康状態を改善する可能性が示された。また、食事に関連する病気の社会的・経済的コストを削減する可能性もある。

このような飽和脂肪に対する否定的な見方に対して、少数の現代的なレビューが異議を唱えている。例えば、飽和脂肪リノール酸に置き換えた場合の健康への影響について、1966年から1973年までのエビデンスを評価したところ、すべての原因、冠動脈性心疾患、心血管疾患による死亡率が増加することが判明した。これらの研究は多くの科学者によって異論があり、医学界では飽和脂肪と心血管疾患は密接に関係しているというのがコンセンサスとなっている。それでもなお、これらの矛盾した研究は、飽和脂肪酸の代わりに多価不飽和脂肪酸を摂取することの是非をめぐる論争に拍車をかけた。

心血管疾患

飽和脂肪が心血管疾患に及ぼす影響については、広範に研究されている。一般的なコンセンサスは、飽和脂肪の摂取量、血中コレステロール値、および心血管疾患の発生率の間には、強く、一貫性があり、段階的な関係があるという中程度の質の証拠があるということである。この関係は、多くの政府機関や医療機関を含め、因果関係があるものとして受け入れられている。

AHAによる2017年のレビューでは、アメリカ人の食事において飽和脂肪を多価不飽和脂肪に置き換えることで、心血管疾患のリスクを30%減らすことができると推定されている。

飽和脂肪の摂取は一般に脂質異常症-総コレステロールの高値、トリグリセリドの高値、低比重リポ蛋白(LDL、「悪玉」コレステロール)の高値、または高比重リポ蛋白(HDL、「善玉」コレステロール)の低値などの血中脂質値の異常-の危険因子と考えられている。これらのパラメータは、ある種の心血管疾患のリスク指標になると考えられている。

いくつかのメタアナリシス(過去に発表された複数の実験的研究のレビューと統合)により、飽和脂肪と血清コレステロール高値との間に有意な関係があることが確認されており、その結果、心血管疾患のリスク増大との因果関係が主張されている(いわゆる脂質仮説)。しかし、高コレステロールは多くの要因によって引き起こされる可能性がある。高LDL/HDL比のような他の指標がより予測的であることが証明されている。52カ国で行われた心筋梗塞の研究では、ApoB/ApoA1(それぞれLDLとHDLに関連)比が、すべての危険因子の中で最も強いCVDの予測因子であった。CVDには、肥満トリグリセリド値、インスリン感受性内皮機能血栓形成性などが関与する経路もあるが、血中脂質プロファイルに異常がなければ、他の既知の危険因子は弱いアテローム作用しか持たないようである。異なる飽和脂肪酸は、様々な脂質レベルに対して異なる影響を及ぼす。

飽和脂肪の摂取量とがんの関係を示す証拠は著しく弱く、医学的に明確なコンセンサスは得られていないようである。

  • 2003年に発表されたメタアナリシスでは、飽和脂肪と乳癌との間に有意な正の関係が認められた。しかし、その後の2つのレビューでは、関係が弱いか重要でないとされており、交絡因子の蔓延が指摘されている。
  • 別のレビューでは、動物性脂肪の摂取と大腸がんの発生率との間に正の関係があることを示す限定的な証拠が見つかった。
  • 他のメタアナリシスでは、飽和脂肪の多量摂取によって卵巣がんのリスクが上昇するという証拠が見つかっている。
  • 血清ミリスチン酸およびパルミチン酸、ならびに食事性ミリスチンおよびパルミチン飽和脂肪酸および血清パルミチンとα-トコフェロール補給との併用が、用量依存的に前立腺がんリスク上昇と関連することを示した研究もある。しかしながら、これらの関連は、実際の原因というよりは、前がん症例と対照の間のこれらの脂肪酸の摂取または代謝の差を反映している可能性がある。

飽和脂肪の摂取が骨のミネラル密度に悪影響を及ぼすことは、さまざまな動物実験で指摘されている。ある研究では、男性が特に影響を受けやすい可能性が示唆されている。

体質と健康全般

一価不飽和脂肪酸を飽和脂肪酸に置き換えると、1日の身体活動および安静時エネルギー消費量が増加することが研究で示されている。また、パルミチン酸食よりも高オレイン酸食の方が、より身体活動が活発で、怒りっぽくなく、イライラしにくいという結果が得られている。

特定の食品に含まれる脂肪タイプの量

一価不飽和脂肪と多価不飽和脂肪の比較

飽和脂肪酸(上)、一価不飽和脂肪酸(中)、多価不飽和脂肪酸(下)を持つトリグリセリドの模式図。

人間の食事で最も一般的な脂肪酸は、不飽和脂肪酸または一価不飽和脂肪酸である。一価不飽和脂肪酸は、赤、全乳製品、ナッツ類、オリーブやアボカドなどの高脂肪果物に多く含まれる。オリーブオイルは約75%が一価不飽和脂肪酸である。高オレイン酸品種のひまわり油は少なくとも70%の一価不飽和脂肪を含む。キャノーラ油カシューナッツはどちらも約58%の一価不飽和脂肪である。タロー(牛脂)は約50%の一価不飽和脂肪であり、ラードは約40%の一価不飽和脂肪である。その他の供給源としては、ヘーゼルナッツアボカド油マカデミアナッツ油グレープシード油、落花生油(ピーナッツ油)、ゴマ油コーン油ポップコーン全粒粉小麦シリアルオートミールアーモンド油ヘンプ油茶油椿などがある。

多価不飽和脂肪酸は、ナッツ類、種子類、魚類、種子油、牡蠣に多く含まれる。

多価不飽和脂肪酸を含む食品には以下のようなものがある:

食料源 (100g) 多価不飽和脂肪 (g)
Walnuts/ja 47
Canola oil/ja 34
Sunflower seed/ja 33
Sesame seed/ja 26
チアシード 23.7
無塩ピーナッツ 16
Peanut butter/ja 14.2
Avocado oil/ja 13.5
Olive oil/ja 11
Safflower oil/ja 12.82
Seaweed/ja 11
Sardines/ja 5
Soybeans/ja 7
Tuna 14
天然サーモン 17.3
Whole grain/ja wheat/ja 9.7

インスリン抵抗性と感受性

MUFA(特にオレイン酸)はインスリン抵抗性の発生率を低下させ、PUFA(特に大量のアラキドン酸)やSFA(アラキジン酸など)はそれを増加させることが判明している。これらの比率は、ヒトの骨格筋リン脂質や他の組織でも指標とすることができる。食事脂肪とインスリン抵抗性の間のこの関係は、インスリン抵抗性と炎症の間の関係の二次的なものと推定され、それは部分的に食事脂肪比(オメガ-3/6/9)によって調節され、オメガ-3と-9の両方が抗炎症性であると考えられている、 オメガ-3とオメガ-9は抗炎症性であり、オメガ-6は抗炎症性である(他の多くの食事成分、特にポリフェノールと運動によっても同様に抗炎症性である)。親炎症型と抗炎症型の両方の脂肪が生物学的に必要であるが、ほとんどのアメリカの食事における脂肪の食事比率はオメガ6に偏っており、その結果、炎症が抑制され、インスリン抵抗性が増強されている。これは、多価不飽和脂肪酸がインスリン抵抗性を予防することが示されているという指摘に反している。

大規模なKANWU研究では、MUFAの摂取量を増やしSFAの摂取量を減らせばインスリン感受性を改善できることがわかったが、それは食事全体の脂肪摂取量が少ない場合に限られた。しかし、一部のMUFAは(SFAのように)インスリン抵抗性を促進する可能性があり、PUFAはそれを防ぐ可能性がある。

がん

赤血球膜中のオレイン酸と他のMUFAの濃度は、乳がんリスクと正の相関があった。同じ膜の飽和指数(SI)は乳癌リスクと逆相関していた。赤血球膜のMUFAとSIの低値は閉経後乳癌の予測因子である。これらの変数はどちらも酵素デルタ-9デサチュラーゼ(Δ9-d)の活性に依存している。

PUFA摂取とがんに関する観察臨床試験の結果には一貫性がなく、性別や遺伝的リスクなど、がん罹患の多くの要因によって異なる。オメガ3系PUFAの摂取量および/または血中濃度が高いほど、乳がんや大腸がんなど特定のがんのリスクが低下するという関連を示した研究もあれば、がんリスクとの関連を認めなかった研究もある。

妊娠障害

多価不飽和脂肪の補充は、高血圧症子癇前症などの妊娠関連障害の発生率には影響を及ぼさないが、妊娠期間をわずかに延長し、早期早産の発生率を減少させる可能性があることが判明した。

米国と欧州の専門家委員会は、胎児と新生児のDHA状態を向上させるために、妊娠中および授乳中の女性が一般集団よりも多量の多価不飽和脂肪酸を摂取することを推奨している。

"シス脂肪 "と "トランス脂肪 "の比較

自然界では、不飽和脂肪酸は一般的に二重結合がシス配置(隣接するC-C結合が同じ側にある)であり、トランスとは対照的である。とはいえ、トランス脂肪酸(TFAs)は反芻動物(ウシやヒツジなど)の肉や乳に少量含まれており、通常、総脂肪の2-5%である。共役リノール酸(CLA)とバセン酸を含む天然のTFAは、これらの動物のルーメンに由来する。CLAは2つの二重結合を持ち、1つはシス型、もう1つはトランス型であるため、同時にシストランスの脂肪酸となる。

各種天然食品および伝統的加工食品中のトランス脂肪含量、単位:g/100g
食品の種類 トランス脂肪酸含有量
バター 2 to 7 g
全乳 0.07 to 0.1 g
動物の脂肪 0 to 5 g
ミンチ 1 g
マーガリンは、トランス脂肪酸を含む可能性のある一般的な製品である。
オリジナルのCrisco料理本の表紙、1912年。クリスコは綿実油を水素添加して作られた。2000年代に配合が見直され、現在ではトランス脂肪酸は少量に抑えられている。

トランス脂肪酸は、植物油や魚油の部分水素添加から意図せずに生じる副産物であることがわかり、人間の食生活におけるトランス脂肪酸に対する懸念が高まった。これらのトランス脂肪酸(一般に「トランス脂肪酸」と呼ばれる)は食用であるが、多くの健康問題に関与している。

部分水素添加におけるシス脂肪酸からトランス脂肪酸への変換

1902年にヴィルヘルム・ノルマンによって発明され特許を取得した水素添加プロセスは、クジラ魚油のような比較的安価な液体油脂をより固形の油脂に変えることを可能にし、腐敗を防ぐことで保存期間を延長した。(消費者の不評を避けるため、当初は原料油脂と製法は秘密にされていた)。最初はバターやショートニングの代替品であるマーガリンの製造に使われ、やがてスナック菓子や包装された焼き菓子、揚げ物などに使われる様々な油脂にも使われるようになった。

油脂を完全に水素添加すると、完全飽和油脂が得られる。しかし、一般的に水素添加は完了する前に中断され、特定の融点、硬度、その他の特性を持つ脂肪製品が得られる。部分水素添加では、異性化反応によってシス二重結合の一部がトランス結合に変化する。トランス型はエネルギーが低いため好まれる。

この副反応が、今日消費されている「トランス」脂肪酸の大半を占めている。2006年に一部の工業化食品を分析したところ、人工ショートニングに最大30%、パンやケーキ製品に10%、クッキーやクラッカーに8%、塩味スナックに4%、ケーキの霜やお菓子に7%、マーガリンやその他の加工スプレッドに26%の「トランス脂肪酸」が含まれていた。しかし、2010年の別の分析では、マーガリンやその他の加工スプレッドに含まれるトランス脂肪酸はわずか0.2%であった。植物性脂肪を部分的に水素添加して作られた人工のトランス脂肪を含む食品に含まれる総脂肪の45%までがトランス脂肪である可能性がある。ベーキング用ショートニングは、改良されていない限り、全脂肪の約30%がトランス脂肪酸である。バターのような高脂肪乳製品には約4%含まれている。トランス脂肪を減らすために改質されていないマーガリン類は、重量比で最大15%のトランス脂肪を含む可能性があるが、改質されたものの中にはトランス脂肪1%未満のものもある。

人気のある「ファーストフード」の食事には、高濃度のTFAが記録されている。2004年と2005年に採取されたマクドナルドのフライドポテトのサンプルを分析したところ、ニューヨークで提供されたフライドポテトには、ハンガリーの2倍ものトランス脂肪酸が含まれていた。2004年と2005年に採取されたフライドポテトのサンプルを分析したところ、ニューヨークで提供されたフライドポテトには、ハンガリーの2倍、トランス脂肪酸が制限されているデンマークの28倍のトランス脂肪酸が含まれていた。また、ケンタッキーフライドチキンの製品では、ハンガリーの製品はニューヨークの製品の2倍のトランス脂肪酸を含むという逆のパターンになった。アメリカ国内でもばらつきがあり、ニューヨークのフライドポテトはアトランタのものよりトランス脂肪酸を30%多く含んでいた。

心血管疾患

多くの研究が、TFAの摂取が心血管疾患のリスクを高めることを発見している。ハーバード公衆衛生大学院は、TFAと飽和脂肪酸をシス一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸に置き換えることが健康に有益であると助言している。

トランス脂肪酸の摂取は、低比重リポ蛋白質(LDL、しばしば「悪玉コレステロール」と呼ばれる)のレベルを上昇させ、高比重リポ蛋白質(HDL、しばしば「善玉コレステロール」と呼ばれる)のレベルを低下させ、血流中のトリグリセリドを増加させ、全身性の炎症を促進することによって、部分的には冠動脈疾患のリスクを増加させることが示されている。

トランス脂肪酸の摂取による主な健康リスクは、冠動脈疾患(CAD)のリスク上昇である。1994年の研究では、米国では年間3万人以上の心臓死がトランス脂肪の摂取に起因すると推定された。ー2006年までにはーではー10万人というーというー 2006年にNew England Journal of Medicine誌に発表されたトランス脂肪に関する研究の包括的なレビューでは、トランス脂肪の摂取とCADとの間には強い信頼できる関係があると報告されており、「カロリー当たりで見ると、トランス脂肪は他のどの栄養素よりもCADのリスクを高めるようであり、低レベルの摂取(総エネルギー摂取量の1~3%)でも実質的にリスクを高める」と結論付けられている。

トランス脂肪酸がCADに及ぼす影響に関する主な証拠は、1976年の開始以来12万人の女性看護師を追跡しているコホート研究であるNurses' Health Studyから得られている。この研究で胡氏らは、この研究の集団から14年間の追跡期間中に得られた900件の冠動脈イベントのデータを分析した。その結果、(炭水化物ではなく)トランス脂肪酸の摂取カロリーが2%増加するごとに、看護師のCADリスクは約2倍(相対リスク1.93、CI:1.43~2.61)に増加することが明らかになった。対照的に、飽和脂肪カロリーが5%増加するごとに(炭水化物カロリーの代わりに)リスクが17%増加した(相対リスクは1.17、CIは0.97~1.41)。「飽和脂肪またはトランス型不飽和脂肪をシス型(水素化されていない)不飽和脂肪に置き換えることは、炭水化物による等カロリー置き換えよりも大きなリスク低下と関連していた。Hu氏はまた、トランス脂肪の消費を減らすことの利点についても報告している。トランス脂肪酸による食物エネルギーの2%を非トランス不飽和脂肪酸に置き換えると、CADのリスクは半分以上(53%)になる。これに比べ、飽和脂肪の食物エネルギーの5%を非トランス型不飽和脂肪に置き換えると、CADのリスクは43%減少する。

別の研究では、CADによる死亡について検討し、トランス脂肪酸の摂取は死亡率の上昇に、多価不飽和脂肪酸の摂取は死亡率の低下に関連していた。

トランス脂肪酸は飽和脂肪酸と同様にLDL(「悪玉コレステロール」)の血中濃度を上昇させるが、飽和脂肪酸とは異なり、HDL(「善玉コレステロール」)のレベルも低下させることが判明している。冠動脈疾患のリスクの指標として広く受け入れられているトランス脂肪酸によるLDL/HDL比の純増加は、飽和脂肪酸によるものの約2倍である。2003年に発表されたランダム化クロスオーバー研究では、(比較的)シス型とトランス型脂肪の多い食事の食後血中脂質への影響を比較したところ、コレステリルエステル転移(CET)はシス型食事後よりもトランス型食事後の方が28%高く、トランス型食事後のリポ蛋白濃度はアポリポ蛋白(a)に富んでいた。

シトカイン検査は、CADリスクのより信頼できる指標となりうるが、まだ研究中である。700人以上の看護師を対象とした研究では、トランス脂肪酸の摂取量が最も多い四分位値の人は、最も少ない人に比べてC反応性蛋白(CRP)の血中濃度が73%高いことが示された。

母乳育児

ヒトの母乳中のトランス脂肪酸は、母親のトランス脂肪酸摂取量によって変動し、母乳で育てられた乳児の血流中のトランス脂肪酸量は、母乳中のトランス脂肪酸量によって変動することが立証されている。1999年に報告された母乳中のトランス脂肪の割合(全脂肪と比較して)は、スペインで1%、フランスで2%、ドイツで4%、カナダと米国で7%であった。

その他の健康リスク

トランス脂肪の摂取がもたらす悪影響は、心血管リスクにとどまらないという指摘もある。一般的に、トランス脂肪酸を摂取することが他の慢性的な健康問題のリスクを高めるという科学的なコンセンサスはあまり得られていない:

  • アルツハイマー病: 2003年2月にArchives of Neurologyに掲載された研究では、動物モデルでは確認されていないが、トランス脂肪酸と飽和脂肪酸の両方の摂取がアルツハイマー病の発症を促進することが示唆された。トランス脂肪酸は中年齢のラットの記憶と学習に障害を与えることが判明している。トランス脂肪酸を食べたラットの脳には、健康な神経機能に重要なタンパク質が少なかった。学習と記憶を司る脳の一部である海馬とその周辺で炎症が起きている。これらは、通常アルツハイマー病の発症時に見られる変化と全く同じであるが、ラットがまだ若かったにもかかわらず、6週間後に見られた。
  • がん:トランス脂肪酸の摂取が癌リスクを全体的に有意に増加させるという科学的コンセンサスはない。アメリカ癌協会は、トランス脂肪酸と癌の関係は "確定していない "と述べている。ある研究では、トランス脂肪酸と前立腺がんとの間に正の関係があることが判明している。しかし、より大規模な研究では、トランス脂肪酸と高悪性度前立腺がんの有意な減少との間に相関関係があることが判明した。トランス脂肪酸の摂取量が増加すると、乳がんのリスクが75%上昇する可能性があると、がんと栄養に関する欧州前向き調査(European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition)のフランス側からの結果で示唆されている。
  • 糖尿病:トランス脂肪酸の摂取によって2型糖尿病のリスクが高まるという懸念が高まっている。しかし、コンセンサスは得られていない。例えば、ある研究では、トランス脂肪の消費量が最も多い四分位値の人ほどリスクが高いことが分かった。別の研究では、総脂肪摂取量やBMIなどの他の因子を考慮すると、糖尿病リスクはないとしている。
  • 肥満:トランス脂肪酸は、摂取カロリーが同程度であるにもかかわらず、体重増加と腹部脂肪を増加させる可能性があるという研究結果がある。ある6年間の実験によると、トランス脂肪食を与えたサルは体重が7.2%増加したのに対し、一価不飽和脂肪食を与えたサルは1.8%増加した。一般的なメディアでは、肥満とトランス脂肪酸との関連はよく取り上げられるが、それは一般的にカロリーの摂り過ぎという文脈での話であり、トランス脂肪酸と肥満との関連について科学的なコンセンサスが得られているわけではない。TFAは、カロリー過剰がない場合でも腹腔内脂肪の沈着を促進し、インスリン抵抗性と関連しており、インスリン受容体結合後のシグナル伝達が障害されていることを示す証拠となった。
  • 女性の不妊症:2007年のある研究では、「トランス不飽和脂肪酸からのエネルギー摂取量が2%増えるごとに、炭水化物からの摂取量とは対照的に、排卵性不妊症のリスクが73%増加した」と報告されている。
  • 大うつ病性障害:スペインの研究者たちが6年間に渡って12,059人の食生活を分析したところ、トランス脂肪酸を最も多く食べている人は、食べていない人に比べてうつ病のリスクが48%高いことがわかった。そのメカニズムのひとつは、トランス脂肪酸が眼窩前頭皮質(OFC)のドコサヘキサエン酸(DHA)濃度を代替することであると考えられる。生後2ヶ月から16ヶ月までのマウスにおいて、トランス脂肪酸の非常に高い摂取量(全脂肪の43%)は、脳内のDHAレベルの低下と関連していた(p=0.001)。自殺した15人の大うつ病被験者の脳を死後調べ、年齢をマッチさせた27人の対照群と比較したところ、自殺した脳ではOFCのDHAが16%(男性平均)~32%(女性平均)少ないことがわかった。OFCは、報酬、報酬期待、共感(これらはすべて抑うつ気分障害で低下する)を制御し、大脳辺縁系を調節している。
  • 行動的な過敏性攻撃性:2012年に行われた先行研究の被験者を対象とした観察分析では、食事から摂取したトランス脂肪酸と、自己申告による行動的攻撃性やイライラ感との間に強い関係があることがわかった。
  • 記憶力の低下:2015年の論文では、1999年から2005年のUCSDスタチン研究の結果を再分析した研究者たちが、「食事によるトランス脂肪酸の摂取が多いほど、生産性の高い年、45歳未満の成人における単語記憶の悪化につながる」と主張している。
  • にきび:2015年の研究によると、トランス脂肪酸は、精製糖精製デンプンなどのグリセミック負荷の高い炭水化物牛乳や乳製品、飽和脂肪酸などとともに、ニキビを促進する欧米型食生活のいくつかの構成要素のひとつであり、一方、ニキビを減少させるオメガ3脂肪酸は欧米型食生活では欠乏している。

生化学的メカニズム

トランス脂肪酸が特定の健康問題を引き起こす正確な生化学的過程は、継続的な研究のテーマである。食事性トランス脂肪酸の摂取は、必須脂肪酸オメガ3を含むEFA)を代謝する体の能力を乱し、動脈壁のリン脂質脂肪酸組成の変化につながり、冠動脈疾患のリスクを高める。

トランス型二重結合は、分子に直線的なコンフォメーションを誘発し、プラーク形成のような硬いパッキングを好むと主張されている。対照的に、シス二重結合の幾何学的形状は、分子に屈曲を生じさせ、それによって剛体形成を妨げると主張されている。

トランス脂肪酸が冠動脈疾患に関与する機序はかなりよく理解されているが、糖尿病への影響の機序についてはまだ研究中である。トランス脂肪酸は長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)の代謝を阻害する可能性がある。しかし、母親の妊娠中のトランス脂肪酸摂取量は、母乳育児と知能の正の相関の根底にあると考えられる出生時の乳児のLCPUFAsレベルと逆相関している。

トランス脂肪酸は他の脂肪酸とは異なって肝臓で処理される。必須脂肪酸をアラキドン酸プロスタグランジンに変換する際に関与する酵素であるデルタ6デサチュラーゼを妨害することによって、肝機能障害を引き起こす可能性がある。

乳製品に含まれる天然の"トランス脂肪酸"

いくつかのトランス脂肪酸は天然脂肪や伝統的な加工食品に含まれている。バセン酸は母乳に含まれ、共役リノール酸(CLA)の異性体の一部は反芻動物の肉や乳製品に含まれる。例えばバターには約3%のトランス脂肪酸が含まれている。

米国酪農協議会は、動物性食品に含まれるトランス脂肪酸は、部分水素添加油に含まれるトランス脂肪酸とは種類が異なり、同じような悪影響はないと主張している。あるレビューもこの結論に同意している(「現在のエビデンスを総合すると、反芻動物由来のトランス脂肪酸の摂取が公衆衛生に及ぼす影響は比較的限定的であることが示唆される」と述べている)が、これは人工的なものに比べて動物由来のトランス脂肪酸の消費量が少ないためかもしれないと注意を促している。

2008年のメタアナリシスでは、天然由来か人工由来かにかかわらず、すべてのトランス脂肪酸が等しくLDL値を上昇させ、HDL値を低下させることが明らかになった。しかし、共役リノール酸(CLA)のような動物性トランス脂肪に関しては、他の研究では異なる結果が示されている。CLAは抗がん作用で知られているが、研究者たちは、シス-9、トランス-11型のCLAが心血管系疾患のリスクを減らし、炎症と闘うのを助けることも発見した。

カナダの2つの研究では、乳製品に自然に含まれるTFAであるワクセン酸は、水素添加された植物性ショートニング、または豚のラードと大豆脂肪の混合物と比較して、総LDLおよびトリグリセリド値を低下させることによって有益である可能性が示された。米国農務省による研究では、工業用トランス脂肪酸はLDLのみを上昇させHDLには有益な影響を与えないのに対し、ワクセン酸はHDLとLDLコレステロールの両方を上昇させることが示された。

公式の推奨事項

認識されたエビデンスと科学的合意に基づき、栄養の専門家はトランス脂肪酸をすべて同様に健康に有害であると考え、その摂取量を微量にまで減らすことを推奨している。2003年には、世界保健機関(WHO)がトランス脂肪酸が食事全体の0.9%を超えないよう勧告し、2018年には、世界の食品供給から産業的に生産されたトランス脂肪酸を排除するための6つの手順を導入した。

米国科学アカデミー(NAS)は、公共政策や製品表示プログラムに使用する栄養科学について、米国およびカナダ政府に助言している。2002年のDietary Reference Intakes for Energy, Carbohydrate, Fiber, Fat, Fatty Acids, Cholesterol, Protein, and Amino Acids(エネルギー、炭水化物、食物繊維、脂肪、脂肪酸、コレステロール、タンパク質、アミノ酸の食事摂取基準)には、トランス脂肪の消費に関する所見と推奨事項が記載されている。

彼らの勧告は2つの重要な事実に基づいている。第一に、トランス脂肪酸は動物由来であれ植物由来であれ、「必須脂肪酸ではなく、ヒトの健康に有益であることは知られていない」。第二に、LDL/HDL比への影響が文書化されていることから、NASは「食事のトランス脂肪酸は飽和脂肪酸よりも冠動脈疾患に関してより有害である」と結論づけた。2006年にNew England Journal of Medicine(NEJM)に掲載されたレビューでは、"栄養学的見地から、トランス脂肪酸の消費はかなりの潜在的害をもたらすが、明らかな利益はない"と述べられている。

このような事実と懸念から、NASはトランス脂肪の摂取に安全なレベルはないと結論づけた。トランス脂肪酸には、適切なレベル、1日推奨量、耐容上限量はない。なぜなら、トランス脂肪の摂取量が増加すると、冠動脈疾患のリスクが高まるからである。

このような懸念にもかかわらず、NASの食事勧告には、食事からトランス脂肪を除去することは含まれていない。というのも、トランス脂肪酸は多くの動物性食品に微量ながら自然に含まれているため、通常の食事から取り除くと、望ましくない副作用や栄養の不均衡が生じる可能性があるからである。そのため、NASは「栄養的に十分な食事を摂りながら、トランス脂肪酸の消費量をできるだけ少なくするよう勧告」している。NASと同様、WHOも公衆衛生の目標とトランス脂肪酸の現実的な摂取量のバランスを取ろうとしており、2003年にはトランス脂肪酸の摂取量を全エネルギー摂取量の1%未満に制限するよう勧告している。

規制アクション

ここ数十年の間に、多くの国でかなりの量の規制が行われ、工業化・商業化された食品のトランス脂肪酸含有量が制限されている。

水素添加の代替案

否定的な社会的イメージと厳しい規制により、部分水素添加に代わる方法への関心が高まっている。脂肪のエステル化では、脂肪酸はトリグリセリドの混合物の中にある。油脂と飽和脂肪酸の適切な混合物に適用し、その後、不要な固体または液体のトリグリセリドを分離すれば、このプロセスは、脂肪酸そのものに影響を与えることなく、部分水素添加と同様の結果を得られる可能性がある。

水素添加は、わずかなトランス脂肪の生成で達成できる。高圧法では、5~6%のトランス脂肪酸を含むマーガリンが製造された。現在の米国の表示要件(下記参照)に基づけば、製造者はトランス脂肪酸不使用と表示することができる。トランス脂肪酸の含有量は、水素添加の温度と時間の長さを変えることによっても変化する。

油(オリーブ、大豆、キャノーラなど)、水、モノグリセリド、脂肪酸を混ぜて、トランス脂肪酸や飽和脂肪酸と同じ働きをする「食用油脂」を作ることができる。

オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸

ω-3脂肪酸はかなり注目されている。ω-3脂肪酸のうち、長鎖型も短鎖型も乳癌リスクとは一貫して関連していなかった。しかしながら、赤血球(赤血球)膜に最も豊富に存在するオメガ-3系多価不飽和脂肪酸であるドコサヘキサエン酸(DHA)の高レベルは、乳がんリスクの低下と関連していた。多価不飽和脂肪酸の摂取によって得られるDHAは、認知能力や行動能力と正の相関がある。さらに、DHAはヒトの脳の灰白質構造、網膜刺激、神経伝達に不可欠である。

エステル交換

いくつかの研究では、全体的な脂肪酸組成が同じであるIEと非IE脂肪を用いた食事を比較することにより、エステル交換(IE)脂肪の健康への影響を調査している。

ヒトを対象としたいくつかの実験的研究では、2位のC16:0またはC18:0が25~40%であるIE脂肪を多量に含む食事と、2位のC16:0またはC18:0が3~9%しかない非IE脂肪を含む同様の食事との間に、空腹時血中脂質に関する統計的な差は認められなかった。また、ココアバターを模倣したIE脂肪製品と本物の非IE脂肪製品の血中コレステロール濃度への影響を比較した研究では、否定的な結果が得られた。

マレーシアのパーム油委員会が資金提供した2007年の研究では、天然のパーム油を他のエステル交換油脂や部分水素添加油脂に置き換えると、LDL/HDL比や血漿グルコース値の上昇といった健康への悪影響が生じると主張した。しかし、これらの影響は、IEプロセスそのものに起因するのではなく、IEおよび部分水素添加脂肪中の飽和酸の割合が高いことに起因すると考えられる。

病気における役割

人体において、血液中のトリグリセリド濃度が高いことは、動脈硬化心臓病脳卒中と関連している。しかし、LDL:HDL比と比較して、トリグリセリド濃度の上昇が相対的に及ぼす悪影響はまだわかっていない。このリスクは、トリグリセリド値とHDL-コレステロール値の間に強い逆相関があることによって一部説明することができる。しかし、トリグリセリド値が高いと小さく高密度なLDL粒子の量が増加することもリスクの原因である。

ガイドライン

血液検査の基準範囲。トリグリセリド(年齢とともに増加)の通常の範囲を右のオレンジ色で示す。

全米コレステロール教育プログラムは、トリグリセリド値のガイドラインを設定している:

レベル 解釈
(mg/dL) (mmol/L)
< 150 < 1.70 通常値 – 低リスク
150–199 1.70–2.25 通常値をやや上回る
200–499 2.26–5.65 若干のリスク
500 以上 > 5.65 とても高い – ハイリスク

これらの値は、絶食後に検査される。8~12時間後に行う。トリグリセリド値は食後しばらくは一時的に高いままである。

AHAは、心臓の健康を改善するために、最適なトリグリセリド値を100 mg/dL(1.1 mmol/L)以下にすることを推奨している。

トリグリセリド値の低下

減量と食生活の改善は、高トリグリセリド血症に対する第一選択の生活習慣改善治療法として有効である。軽度または中等度の高トリグリセリド血症の患者には、減量、適度な運動、食事療法を含む生活習慣の改善が推奨される。 および食生活の改善が推奨される。 これには、食事における炭水化物(特に果糖)と脂肪の制限、およびオメガ3脂肪酸の摂取が含まれる。 前述の生活習慣の改善で改善しないトリグリセリド高値の場合は医薬品が推奨され、まずフィブラートが推奨される。 オメガ-3-カルボン酸もまた、非常に高値の血中トリグリセリドの治療に用いられる処方薬である。

高トリグリセリド血症を医薬品で治療するかどうかは、そのレベルと心血管疾患の他の危険因子の有無によって決まる。膵炎のリスクを高めるような高値の場合は、フィブラートクラスの薬物で治療する。ナイアシンとオメガ3脂肪酸、およびスタチンクラスの薬物を併用することもあり、心血管リスクの低減が必要な中等度の高中性脂肪血症にはスタチンが主な医薬品となる。

脂質の消化と代謝

脂肪は健康な体内で分解され、その成分であるグリセロール脂肪酸を放出する。グリセロール自体は肝臓でグルコースに変換され、エネルギー源となる。脂肪やその他の脂質は、膵臓で産生されるリパーゼと呼ばれる酵素によって体内で分解される。

多くの種類の細胞は、代謝のエネルギー源としてグルコースと脂肪酸のどちらかを使うことができる。特に心臓と骨格筋は脂肪酸を好む。長年の反対主張にもかかわらず、脂肪酸はミトコンドリアの酸化を通して脳細胞の燃料源としても使われる。

こちらも参照