Docosahexaenoic acid/ja: Difference between revisions
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構造的には、DHAは22-[[carbon chain/ja|炭素鎖]](''docosa-''は[[:en:Ancient Greek|古代ギリシア語]]の22に由来する)と6つ(''hexa-'')の''[[Cis-trans isomerism/ja|cis]]''[[double bond/ja|二重結合]](''-en-'')を持つ[[carboxylic acid/ja|カルボン酸]](-''oic acid'')である。[[trivial name/ja|慣用名]]は''cervonic acid''([[:en:Latin|ラテン語]]で「脳」を意味する''cerebrum''に由来)であり、その[[systematic name/ja|系統名]]は''all-cis-docosa-4,7,10,13,16,19-hexa-enoic acid''である。 | 構造的には、DHAは22-[[carbon chain/ja|炭素鎖]](''docosa-''は[[:en:Ancient Greek|古代ギリシア語]]の22に由来する)と6つ(''hexa-'')の''[[Cis-trans isomerism/ja|cis]]''[[double bond/ja|二重結合]](''-en-'')を持つ[[carboxylic acid/ja|カルボン酸]](-''oic acid'')である。[[trivial name/ja|慣用名]]は''cervonic acid''([[:en:Latin|ラテン語]]で「脳」を意味する''cerebrum''に由来)であり、その[[systematic name/ja|系統名]]は''all-cis-docosa-4,7,10,13,16,19-hexa-enoic acid''である。 | ||
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DHAは、脳と網膜に最も多く存在するオメガ3系脂肪酸である。DHAは脳の[[polyunsaturated fatty acid/ja|多価不飽和脂肪酸]]の40%、網膜のPUFAの60%を占める。[[neuron/ja|神経細胞]]の[[plasma membrane/ja|細胞膜]]の50%はDHAで構成されている。DHAは、コリン、グリシン、タウリンのキャリアを介した輸送、遅延整流[[potassium channel/ja|カリウムチャネル]]の機能、および[[synaptic vesicle/ja|シナプス小胞]]に含まれる[[rhodopsin/ja|ロドプシン]]の応答を調節する。 | DHAは、脳と網膜に最も多く存在するオメガ3系脂肪酸である。DHAは脳の[[polyunsaturated fatty acid/ja|多価不飽和脂肪酸]]の40%、網膜のPUFAの60%を占める。[[neuron/ja|神経細胞]]の[[plasma membrane/ja|細胞膜]]の50%はDHAで構成されている。DHAは、コリン、グリシン、タウリンのキャリアを介した輸送、遅延整流[[potassium channel/ja|カリウムチャネル]]の機能、および[[synaptic vesicle/ja|シナプス小胞]]に含まれる[[rhodopsin/ja|ロドプシン]]の応答を調節する。 | ||
DHAを多く含む[[Phosphatidylserine/ja|ホスファチジルセリン]](PS)は、[[Axon/ja#Extracellular signaling|神経細胞シグナル伝達]]や[[neurotransmitter/ja|神経伝達物質]]の合成に関与しており、DHAの欠乏は認知機能の低下と関連している。重度のうつ病患者の脳組織では、DHA濃度が低下している。 | |||
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好気性真核生物、具体的には微細藻類、[[moss/ja|コケ]]、[[fungus/ja|菌類]]、および一部の動物は、デサチュラーゼとエロンガーゼ[[enzyme/ja|酵素]]の連続的な作用によって触媒される一連の脱飽和反応と伸長反応としてDHAの生合成を行う。もともと''Thraustochytrium''で同定されたこの経路は、これらのグループに当てはまる: | |||
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=== 哺乳類 === | |||
ヒトでは、DHAは食事から摂取するか、[[eicosapentaenoic acid/ja|エイコサペンタエン酸]](EPA、20:5、ω-3)から少量変換される。2015年にヒトのΔ4-脱飽和酵素として[[FADS2/ja|FADS2]]が同定されたことで、ヒトもDPAへのΔ5-伸長とDHAへのΔ4-脱飽和を含む、「好気性真核生物」全体の経路をたどることが知られるようになった。 | |||
1991年に提唱された「Sprecherのシャント」仮説では、EPAは24:5 ω-3に2回伸長された後、ミトコンドリアで([[delta 6 desaturase/ja|Δ6デサチュラーゼ]]を介して)24:6 ω-3に脱飽和され、その後[[peroxisome/ja|ペルオキシソーム]]で[[beta oxidation/ja|β酸化]]を介してDHA(22:6 ω-3)に短縮されると仮定している。科学者たちは(2015年まで)長い間、哺乳類でΔ4-デサチュラーゼを見つけようとして失敗してきたため、この仮説はしばらく受け入れられた。しかし、シャントモデルは臨床データと一致せず、特にβ酸化欠損の患者はDHA合成に問題を示さない。Δ4-デサチュラーゼが同定されたことで、このモデルは時代遅れと考えられるようになった。 | |||
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海洋細菌や微細藻類''[[Schizochytrium/ja|Schizochytrium]]''は、好気性[[polyketide synthase/ja|ポリケチド合成酵素]]経路を使ってDHAを合成する。 | |||
==代謝{{Anchor|Metabolism}}== | |||
==Metabolism== | DHAは、DHA由来の[[specialized pro-resolving mediator/ja|プロ・リゾルブ専門のメディエーター]](SPMs)、DHAエポキシド、DHAの求電子性オキソ誘導体(EFOX)、ニューロプロスタン、エタノールアミン、アシルグリセロール、アミノ酸または神経伝達物質のドコサヘキサエノイルアミド、ヒドロキシ脂肪酸の分岐DHAエステルなどに代謝される。 | ||
酵素[[CYP2C9/ja|CYP2C9]]は、DHAを[[epoxydocosapentaenoic acid/ja|エポキシドコサペンタエン酸]](EDP;主に19,20-エポキシエイコサペンタエン酸異性体[すなわち10,11-EDP])に代謝する。 | |||
==潜在的な健康影響{{Anchor|Potential health effects}}== | |||
==Potential health effects== | {{See also/ja|Omega-3 fatty acid/ja#Health effects}} | ||
{{See also|Omega-3 fatty acid#Health effects}} | |||
===心血管=== | |||
方法論的な矛盾に悩まされながらも、現在では、生態学的研究、RCT、メタアナリシス、動物実験から、心血管系の健康にとってオメガ3系の食事摂取が有益であるという説得力のあるエビデンスが得られている。n-3系FAのうち、DHAは心筋への優先的取り込み、強力な抗炎症活性、神経プロテクチンやレゾルビンへの代謝により、最も有益であると論じられてきた。 | |||
DHAは、心臓血管の保護と冠動脈疾患のリスク低下に関与している。DHAのサプリメントは、高密度リポタンパク質(「善玉コレステロール」)を改善し、総コレステロールや血圧値を下げることが示されている。 | |||
===妊娠・授乳期=== | |||
オメガ3脂肪酸を多く含む食品は、妊娠を希望する女性や授乳中の女性に勧められることがある。国際脂肪酸・脂質学会のワーキンググループは、妊娠中・授乳中の女性にDHAを300 mg/日摂取することを推奨しているが、調査に参加した女性の平均摂取量は45 mg~115 mg/日であり、カナダの調査と同様であった。 | |||
===脳と視覚機能=== | |||
哺乳類の中枢神経系の主要な構造成分であるDHAは、脳と網膜において最も豊富なオメガ3脂肪酸である。脳と網膜の機能は、特に[[grey matter/ja|灰白質]]と網膜[[photoreceptor cell/ja|視細胞]]外分節に豊富な膜を持つ[[cell membrane/ja|細胞膜]]と[[cell signaling/ja|細胞シグナル伝達]]特性の広い範囲をサポートするために、DHAの食事摂取に依存している。 | |||
ある[[systematic review/ja|系統的レビュー]]では、DHAは[[retinitis pigmentosa/ja|網膜色素変性症]]の人の視野を改善する上で有意な利点はないことが判明した。動物実験では[[reinforced lipids/ja|重水素強化]]の経口摂取の効果が示されている。DHA(D-DHA)は[[macular degeneration/ja|黄斑変性症]]の予防に効果がある。 | |||
=== 喘息 === | |||
=== | DHAやエイコサペンタエン酸(EPA)などのオメガ3系PUFAは、喘息やアレルギー疾患の予防・治療に有効である。 | ||
==栄養{{Anchor|Nutrition}}== | |||
==Nutrition== | [[File:DHA pills.jpg|thumb|藻類ベースのDHAサプリメント]] | ||
[[File:DHA pills.jpg|thumb| | 通常の調理済み[[salmon/ja|サーモン]]には、100グラムあたり500~1500 mgのDHAと300~1000 mgのEPAが含まれている。DHAを豊富に含むその他の魚介類としては、[[caviar/ja|キャビア]](100グラムあたり3400 mg)、[[anchovy/ja|アンチョビ]](100グラムあたり1292 mg)、[[mackerel/ja|サバ]](100グラムあたり1195 mg)、調理した[[herring/ja|ニシン]](100グラムあたり1105 mg)などがある。 | ||
[[Brain as food/ja|食品として摂取される哺乳類の脳]]も、直接摂取するのに適している。例えば牛の脳には、100gあたり約855mgのDHAが含まれている。DHAはある種の特殊な組織で見られる主要な脂肪酸かもしれないが、脳は別として、これらの組織は通常、精細管や網膜のようにサイズが小さい。そのため、脳を除いた動物性食品に含まれるDHAの量は、一般的にごくわずかである。 | |||
[[Brain as food| | |||
===藻類由来のDHAの発見=== | |||
= | 1980年代初頭、[[:en:NASA|NASA]]は長期間の[[:en:space flight|宇宙飛行]]で酸素と栄養を生成できる植物ベースの食物源に関する科学的研究を後援した。ある種の海洋[[algae/ja|藻類]]は豊富な栄養素を生産し、DHAと[[arachidonic acid/ja|アラキドン酸]]という2つの多価不飽和脂肪酸を含む藻類ベースの植物性オイルの開発につながった。 | ||
===食品添加物としての利用=== | |||
DHAは[[food supplement/ja|食品サプリメント]]として広く利用されている。最初は主に乳児用ミルクに使用されていた。2019年、米国食品医薬品局はDHAの適格[[health claim/ja|ヘルスクレーム]]を公表した。 | |||
製造されたDHAの中には、藻類から抽出された[[vegetarian/ja|ベジタリアン]]製品もあり、DHAや[[Eicosapentaenoic acid/ja|EPA]]などの他のオメガ3を含む魚油と市場で競合している。魚油もDHAも、食品添加物として加工された後は無味無臭である。 | |||
===ベジタリアンとビーガンの研究==== | |||
= | {{Main/ja|Vegetarian nutrition/ja#Omega-3 fatty acids}} | ||
{{Main|Vegetarian nutrition#Omega-3 fatty acids}} | [[vegetarian/ja|ベジタリアン]]の食事に含まれるDHAの量は限られており、[[vegan/ja|ビーガン]]の食事にはDHAが含まれないのが一般的である。予備研究では、藻類をベースとした[[dietary supplement/ja|サプリメント]]はDHA濃度を増加させた。成人のベジタリアンやビーガンにおけるDHA欠乏による健康や認知への悪影響についてはほとんど証拠がないが、乳児に十分なDHAを供給するためには、[[breast milk/ja|母乳]]レベルが依然として懸念される。 | ||
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===魚油に含まれるDHAとEPA=== | |||
魚油は、EPAとDHAを含むオメガ3脂肪酸の混合物を含む[[capsule (pharmacy)/ja|カプセル]]で広く販売されている。サプリメントカプセルに含まれる[[oxidation/ja|酸化された]]魚油は、EPAとDHAのレベルが低いかもしれない。光、酸素への暴露、熱はすべて魚油サプリメントの酸化の原因となる。保管時に低温に保たれている高品質の製品を購入し、冷蔵庫で保管することで、酸化を最小限に抑えることができる。 | |||
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Names | |||
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Preferred IUPAC name
(4Z,7Z,10Z,13Z,16Z,19Z)-Docosa-4,7,10,13,16,19-hexaenoic acid | |||
Other names | |||
Identifiers | |||
3D model (JSmol)
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Abbreviations | DHA | ||
1715505 | |||
ChEBI | |||
ChEMBL | |||
ChemSpider | |||
DrugBank | |||
EC Number |
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KEGG | |||
PubChem CID
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UNII | |||
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Properties | |||
C22H32O2 | |||
Molar mass | 328.488 g/mol | ||
Density | 0.943 g/cm3 | ||
Melting point | −44 °C (−47 °F; 229 K) | ||
Boiling point | 446.7 °C (836.1 °F; 719.8 K) |
ドコサヘキサエン酸(DHA)は、ヒトの脳、大脳皮質、皮膚、網膜の主要な構造成分であるオメガ3脂肪酸である。22:6(n-3)という脂肪酸表記法が与えられている。DHAはα-リノレン酸から合成することもできるし、母乳(母乳)、脂肪分の多い魚、魚油、藻類油から直接摂取することもできる。DHA(例えば、サケ、ニシン、サバ、イワシなどの脂肪魚から)の摂取は、認知を含む多くの生理学的利益に寄与する。脳の神経細胞の主要な構造成分であるDHAの機能は、神経細胞の伝導をサポートし、神経細胞膜タンパク質(受容体や酵素など)の最適な機能を可能にすることである。
構造的には、DHAは22-炭素鎖(docosa-は古代ギリシア語の22に由来する)と6つ(hexa-)のcis二重結合(-en-)を持つカルボン酸(-oic acid)である。慣用名はcervonic acid(ラテン語で「脳」を意味するcerebrumに由来)であり、その系統名はall-cis-docosa-4,7,10,13,16,19-hexa-enoic acidである。
DHAを含む藻類やDHAを含む動物性食品を食べない生物では、DHAは代わりにα-リノレン酸から体内で生産され、 より短いオメガ3脂肪酸で、植物によって製造される(植物から得られる動物性食品にも含まれる)。 限られた量のエイコサペンタエン酸とドコサペンタエン酸は、若い女性と男性のα-リノレン酸代謝の可能な産物である。 母乳中のDHAは発育中の乳児にとって重要である。女性のDHA産生率は男性より15%高い。
DHAは脳のリン脂質や網膜に含まれる主要な脂肪酸である。予備研究では、アルツハイマー病や心血管疾患などの疾患における潜在的な有用性が調査されている。
中枢神経系成分
DHAは、脳と網膜に最も多く存在するオメガ3系脂肪酸である。DHAは脳の多価不飽和脂肪酸の40%、網膜のPUFAの60%を占める。神経細胞の細胞膜の50%はDHAで構成されている。DHAは、コリン、グリシン、タウリンのキャリアを介した輸送、遅延整流カリウムチャネルの機能、およびシナプス小胞に含まれるロドプシンの応答を調節する。
DHAを多く含むホスファチジルセリン(PS)は、神経細胞シグナル伝達や神経伝達物質の合成に関与しており、DHAの欠乏は認知機能の低下と関連している。重度のうつ病患者の脳組織では、DHA濃度が低下している。
生合成
好気性真核生物の経路
好気性真核生物、具体的には微細藻類、コケ、菌類、および一部の動物は、デサチュラーゼとエロンガーゼ酵素の連続的な作用によって触媒される一連の脱飽和反応と伸長反応としてDHAの生合成を行う。もともとThraustochytriumで同定されたこの経路は、これらのグループに当てはまる:
- デルタ6デサチュラーゼによってα-リノレン酸の6番目の炭素で脱飽和が起こり、ステアリドン酸(SDA、18:4 ω-3)が生成される、
- ステアリドン酸がデルタ6エロンガーゼによって伸長され、エイコサテトラエン酸(ETA、20:4 ω-3)が生成される、
- デルタ5デサチュラーゼによってエイコサテトラエン酸の5番目の炭素で脱飽和し、エイコサペンタエン酸(EPA、20:5 ω-3)を生成する、
- デルタ5エロンガーゼによってエイコサペンタエン酸が伸長され、ドコサペンタエン酸(DPA、22:5 ω-3)が生成される。
- デルタ4デサチュラーゼによってドコサペンタエン酸の4番目の炭素で脱飽和してDHAを生成する。
哺乳類
ヒトでは、DHAは食事から摂取するか、エイコサペンタエン酸(EPA、20:5、ω-3)から少量変換される。2015年にヒトのΔ4-脱飽和酵素としてFADS2が同定されたことで、ヒトもDPAへのΔ5-伸長とDHAへのΔ4-脱飽和を含む、「好気性真核生物」全体の経路をたどることが知られるようになった。
1991年に提唱された「Sprecherのシャント」仮説では、EPAは24:5 ω-3に2回伸長された後、ミトコンドリアで(Δ6デサチュラーゼを介して)24:6 ω-3に脱飽和され、その後ペルオキシソームでβ酸化を介してDHA(22:6 ω-3)に短縮されると仮定している。科学者たちは(2015年まで)長い間、哺乳類でΔ4-デサチュラーゼを見つけようとして失敗してきたため、この仮説はしばらく受け入れられた。しかし、シャントモデルは臨床データと一致せず、特にβ酸化欠損の患者はDHA合成に問題を示さない。Δ4-デサチュラーゼが同定されたことで、このモデルは時代遅れと考えられるようになった。
嫌気性経路
海洋細菌や微細藻類Schizochytriumは、好気性ポリケチド合成酵素経路を使ってDHAを合成する。
代謝
DHAは、DHA由来のプロ・リゾルブ専門のメディエーター(SPMs)、DHAエポキシド、DHAの求電子性オキソ誘導体(EFOX)、ニューロプロスタン、エタノールアミン、アシルグリセロール、アミノ酸または神経伝達物質のドコサヘキサエノイルアミド、ヒドロキシ脂肪酸の分岐DHAエステルなどに代謝される。
酵素CYP2C9は、DHAをエポキシドコサペンタエン酸(EDP;主に19,20-エポキシエイコサペンタエン酸異性体[すなわち10,11-EDP])に代謝する。
潜在的な健康影響
心血管
方法論的な矛盾に悩まされながらも、現在では、生態学的研究、RCT、メタアナリシス、動物実験から、心血管系の健康にとってオメガ3系の食事摂取が有益であるという説得力のあるエビデンスが得られている。n-3系FAのうち、DHAは心筋への優先的取り込み、強力な抗炎症活性、神経プロテクチンやレゾルビンへの代謝により、最も有益であると論じられてきた。
DHAは、心臓血管の保護と冠動脈疾患のリスク低下に関与している。DHAのサプリメントは、高密度リポタンパク質(「善玉コレステロール」)を改善し、総コレステロールや血圧値を下げることが示されている。
妊娠・授乳期
オメガ3脂肪酸を多く含む食品は、妊娠を希望する女性や授乳中の女性に勧められることがある。国際脂肪酸・脂質学会のワーキンググループは、妊娠中・授乳中の女性にDHAを300 mg/日摂取することを推奨しているが、調査に参加した女性の平均摂取量は45 mg~115 mg/日であり、カナダの調査と同様であった。
脳と視覚機能
哺乳類の中枢神経系の主要な構造成分であるDHAは、脳と網膜において最も豊富なオメガ3脂肪酸である。脳と網膜の機能は、特に灰白質と網膜視細胞外分節に豊富な膜を持つ細胞膜と細胞シグナル伝達特性の広い範囲をサポートするために、DHAの食事摂取に依存している。
ある系統的レビューでは、DHAは網膜色素変性症の人の視野を改善する上で有意な利点はないことが判明した。動物実験では重水素強化の経口摂取の効果が示されている。DHA(D-DHA)は黄斑変性症の予防に効果がある。
喘息
DHAやエイコサペンタエン酸(EPA)などのオメガ3系PUFAは、喘息やアレルギー疾患の予防・治療に有効である。
栄養

通常の調理済みサーモンには、100グラムあたり500~1500 mgのDHAと300~1000 mgのEPAが含まれている。DHAを豊富に含むその他の魚介類としては、キャビア(100グラムあたり3400 mg)、アンチョビ(100グラムあたり1292 mg)、サバ(100グラムあたり1195 mg)、調理したニシン(100グラムあたり1105 mg)などがある。
食品として摂取される哺乳類の脳も、直接摂取するのに適している。例えば牛の脳には、100gあたり約855mgのDHAが含まれている。DHAはある種の特殊な組織で見られる主要な脂肪酸かもしれないが、脳は別として、これらの組織は通常、精細管や網膜のようにサイズが小さい。そのため、脳を除いた動物性食品に含まれるDHAの量は、一般的にごくわずかである。
藻類由来のDHAの発見
1980年代初頭、NASAは長期間の宇宙飛行で酸素と栄養を生成できる植物ベースの食物源に関する科学的研究を後援した。ある種の海洋藻類は豊富な栄養素を生産し、DHAとアラキドン酸という2つの多価不飽和脂肪酸を含む藻類ベースの植物性オイルの開発につながった。
食品添加物としての利用
DHAは食品サプリメントとして広く利用されている。最初は主に乳児用ミルクに使用されていた。2019年、米国食品医薬品局はDHAの適格ヘルスクレームを公表した。
製造されたDHAの中には、藻類から抽出されたベジタリアン製品もあり、DHAやEPAなどの他のオメガ3を含む魚油と市場で競合している。魚油もDHAも、食品添加物として加工された後は無味無臭である。
ベジタリアンとビーガンの研究=
ベジタリアンの食事に含まれるDHAの量は限られており、ビーガンの食事にはDHAが含まれないのが一般的である。予備研究では、藻類をベースとしたサプリメントはDHA濃度を増加させた。成人のベジタリアンやビーガンにおけるDHA欠乏による健康や認知への悪影響についてはほとんど証拠がないが、乳児に十分なDHAを供給するためには、母乳レベルが依然として懸念される。
魚油に含まれるDHAとEPA
魚油は、EPAとDHAを含むオメガ3脂肪酸の混合物を含むカプセルで広く販売されている。サプリメントカプセルに含まれる酸化された魚油は、EPAとDHAのレベルが低いかもしれない。光、酸素への暴露、熱はすべて魚油サプリメントの酸化の原因となる。保管時に低温に保たれている高品質の製品を購入し、冷蔵庫で保管することで、酸化を最小限に抑えることができる。
子供の1日当たりのDHA推奨摂取量
最適なDHA濃度は脳の発達と成熟にとって重要であるため、子供のDHA摂取に関する1日当たりの推奨量が定められている。
下の表は、年齢別に推奨される1日のDHA/DHA+EPA摂取量を示したものである:
PUFAs | 年齢 (年) | 1日の推奨摂取量 |
DHA | 1 - 2 | 10 - 12 mg/kg/day |
DHA + EPA | 2 - 4 | 100 - 150 mg/day |
4 - 6 | 150 - 200 mg/day | |
6 - 10 | 200 - 250 mg/day |
専門家は、12~24ヶ月の子供には10~12mg/日、2~4歳の子供には100~150mg/日のDHA+EPA、4~6歳の子供には150~200mg/日のDHA+EPAの摂取を推奨している。